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映画 自転車泥棒(1948伊) [日記(2019)]

  自転車泥棒 [DVD] 「イタリア・ネオレアリズモ映画の代表作」(wikipedia)だそうです。第二次世界大戦の敗戦と不況に苦しみ、職のない人々が街にあふれていた時代のイタリアの話です。同じ敗戦国日本でも、1946年には1000万人の餓死者が出ると噂された時代です。

 二人の子供を抱え失業中のアントニオ(ランベルト・マジョラーニ)は、やっとのことで役所のポスター貼りの仕事にありつきます。但し、自転車持参という条件が付きます。これでやっと一息つける、家族手当も付き安定した生活に踏み出せると思ったわけですが、肝心の自転車は質屋。何処の国でも、困難な時代に強いのは女性。アントニオの妻はシーツを6枚質に入れて自転車を質屋から受けだします。物資がが不足している時代だからシーツが質草になるのでしょう。アントニオは仕事を始めるわけですが、ポスターを貼っている途中、この自転車が盗まれ「自転車泥棒」が始まります。盗まれた自転車は分解されて部品となってマーケットに流れるそうで、アントニオと幼い息子のブルーノ(エンツォ・スタヨーラ)は闇市?を自転車を探して彷徨います。闇市で逞しく生きる庶民、希望を失い占いに頼る人々など、この暗い時代の諸相が映し出されます。

 そう簡単には見つかりらず、疲れ果てたふたりはレストランに入ります。盗まれた自転車を探す人もいれば、家族で楽しそうに食事を楽しむ恵まれた人々もいます。そうした光景に励まされ、アントニオは給与を計算し妻とふたりの子供との未来を描き、再び自転車探しを始めます。
 やっと自転車泥棒を見つけるものの取り逃がし、泥棒が接触した老人を追いかけます。老人とともに教会の慈善事業(炊き出し)を巡り、この時代の暗さが映し出されます。老人から泥棒の住まいを聞き出し、泥棒を問い詰めますがあっさり否定。近所の住民がどやどや現れ泥棒の味方をし、警官に訴えるも自転車は発見できず、証拠もなく自転車探しは行き詰まります。
 貧しい父親と息子が盗まれた自転車を探す話ですから、最後は見つかるというホノボノとしたハッピーエンドだろうと思ったのですが、そこはネオレアリズモ。

 アントニオの眼に、道端に停められた自転車が映ります。被害者が加害者に転換する瞬間です。アントニオは子供を家に帰し自転車を盗みます。息子は電車に乗れず父親の元に向かい、アントニオは息子の眼の前で自転車を盗み、捕まります。持ち主の温情で許され、親子で去ってゆくシーンでエンドロール。

 時代に翻弄され追い詰められた男の物語です。男に同情の余地は十分にありますが、息子の目の前で盗みをはたらき捕まったわけです。この父子は将来どんな関係を築き得るのか...。こうした『自転車泥棒』で描かれる諸相は、イタリアに限らずヨーロッパで見られる風景であったはずです。この風景からまた復興もあったわけです。盗み盗まれる行為もまたこの時代に限ったことではないでしょうが、人間関係の復興は果たしてあり得るのか。名作と呼ばれる由縁なのでしょう。
 面白いかと云えそうでもありませんが、見ておいて損はありません。

監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
出演:ランベルト・マジョラーニ エンツォ・スタヨーラ

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