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佐藤友哉 転生! 太宰治 転生して、すみません (2018星海社FICTIONS) [日記(2019)]

転生! 太宰治 転生して、すみません (星海社FICTIONS)  面白いと聞いたので図書館で借りてきました、借りるのが恥ずかしくなる様な表紙です。借りてから気づいたのですが、『デンデラ』の作者です。転生するのが太宰治ですから小説にもなるのでしょうが、漱石、鴎外ならどうなんでしょう。
序章 太宰、西暦2017年の東京に転生する
第1章 太宰、モテる
第2章 太宰、心中する
  ・・・
 太宰が亡くなったのは1948年、70年後の2017年に転生したわけですから、様々なカルチャーショックに見舞われるはずですが、すんなり同化、そこはこの手の小説のご都合主義です。文体は太宰に似せてあり、太宰の小説を下敷きした部分があるのでしょうが、よく分かりません。自己嫌悪と自尊心を道化で韜晦するあたりは転生しても元のママ。

 太宰は、書店の棚に自分の小説がずらりと並んでいるのを目にし『人間失格』が600万部売れたことを聞いて、漱石、鴎外と並ぶ文豪になったんだと有頂天。生きているころは売れていなかったのですから当然かも知れません。志賀直哉の本が一冊もないことに溜飲を下げ、川端康成が自殺していることを知って、俺の自殺未遂を非難したくせに一緒じゃないか!、と。

 カプセルホテルに泊まったり、メイドカフェに行ったり。この小説『転生!太宰治』は何処へ行こうとしているのか?。第九章 「芥川賞のパーティーでつまみ出される」あたりから、だんだん本題に入ります。太宰は二度芥川賞候補になりますが落選しています。欲しくて仕方がなかった芥川賞を逃したのは、老作家が牛耳る因循姑息な「文壇」のせいだと考えています。今でも芥川賞が欲しい!、2017年に転生した太宰治が獲れるはずもないわけでどうするのか?。第十章「インターネットと出会う」第十一章「芥川賞を欲する」あたりから本題に入ります。太宰はネットサーフィンで「文系地下JKアイドルののたん日記」を見つけ、このブロガー"ののたん"を小説家に仕立て上げ芥川賞を狙おうと企みます。太宰は、自分を芥川賞から外した既成文壇に「復讐」し、今では消えた同時代の作家に対する「鎮魂」だと考えます。これが小説のテーマらしい。この作家に檀一雄、織田作之助、坂口安吾が含まれていますが、それはないです。
 で太宰は"ののたん"を教育し、ブログは一躍人気を高め、やがて講談社から声が掛かり…となるわけです。ののたん≒太宰治は芥川賞を取れるのか?、で続編『転生! 太宰治2 芥川賞が、ほしいのです』に続くわけです。

 半日で読めます。面白いかというと「太宰治」というキャラクターが現代に登場するという斬新なアイデアは買いますが、オッサンには荒唐無稽過ぎてついて行けません。続編はパスです。

タグ:読書
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