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橋本大三郎 大澤真幸 ふしぎなキリスト教 ③ (2011講談社) [日記(2019)]

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)  続きです。やっと第三部『いかに「西洋」をつくったか』です。パレスチナの弱小民族ユダヤから起こったキリスト教が、世界的宗教に発展したことが最大の「ふしぎ」です。パウロが当時の国際標準だったギリシア語で新訳の中核部分(手紙)を書き、イエスの事蹟が福音書にまとめられ、聖書として流通していった。グーテンベルグ以前、おまけにラテン語ですから、聖職者が民衆に解説するわけで、人々に受け入れられた最大の理由は何か?。本書では触れられていません。きっと「イジメられっ子」理論だったのではないか(笑。どの国でも何時でも、民衆は常にイジメられる存在ですから。

 第三部のハイライトは、キリスト教が「科学」と「資本主義」を発展させたこと。資本主義の方はマックス・ウェーバーだろうと想像がつきますが、科学の方は、地動説を認めなかったのは教会だろうと突っ込みたくなります。

カルヴァンの救済予定説
 マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』です。宗教改革で登場したカルヴァン(カルビン)の「救済予定説」が資本主義を産んだというあの有名な本。「救済予定説」とは、キリスト教徒は、最後に神の国で永遠の生を受けるか、地獄に堕ちて永遠の責め苦に会うか、予め神によって決められているという説。どちらに行くかは最後の審判で伝えられる。予め決まっているのなら、一生懸命働こうが働かないでおこうが同じこと、身を律して真面目にやることもなかろうと考え人間は堕落するはず。救済予定説から「資本主義の精神」である勤勉はうまれこない。ところがウェーバーによるとそうはならず、救済予定説のもとで人は勤勉に働くようになった。どういうことかと言うと、
 勤勉に働くことは神の命じた隣人愛の実践であるり、勤勉は神の恩寵のあらわれである。自分が神の恩寵を受けている、神の国行くと決まっていると確信したければ、毎日勤勉に働くしかない。怠けている人間は恩寵から見放されている人間と見なされる。従って人は神を信じ(というか、神の恩寵を受けていると見なされたいため、見栄をはって)勤勉に働く。少し無理があるような気がしますが、何しろマックス・ウェーバーですからそうなんでしょう?。

科学が宗教から生まれる逆説
 神が人間を創ったという『創世記』は、自然科学の世界観、合理性と矛盾します。その科学の誕生を宗教が後押ししたという話です。
 ギリシア哲学がキリスト教徒圏に入り、キリスト教徒は、哲学の中心概念である「理性(論理)」で神を再検証します。神を見ることはできないので、神の創った自然、人間を探求し、神の意図を知ることで神に近づこうとします。これも信仰のひとつ。ここからコペルニクス(カトリック司祭)、ケプラー、ニュートンが生まれ、理性を人間社会に適用してスピノザ、ルソー、カントが生まれ、ヘーゲル、マルクスがうまれたというわけです。

キリスト教と自然科学、社会科学は対立せず、科学はキリスト教に包含されるということでしょう。アダム・スミスが市場メカニズム「神の見えざる手」と呼んだことは象徴てきです。

 日本には「八百万の神」がいます。山には山の神、海には海の神、太陽の神、月の神。一新教では、太陽の月も自然も全てにただ一人神の意志が貫徹している、宇宙の果てから地上の虫まで。唯一神ですから、太陽を創った設計図も虫を創った設計図も同じ原理で作られていはず。「理性」「論理」で解明し、設計図を解読すことで人間を創った神の姿を見、神に近づこう。多神教だと設計図の原理はバラバラでそうはいかない。そういうことなんでしょうね。

 第三部も、ローマ・カトリックと東方正教会、利子の解禁、聖なる言語と布教の関係、等々面白い話が詰まっています。この勢いで田川建三にいこうか思います。

 第一部 一神教を理解する ~起源としてのユダヤ教~
 第二部 イエス・キリストとは何か
 第三部 いかに「西洋」をつくったか・・・このページ

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頂きものの EOS kiss X5 [日記(2019)]

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                    お馴染みの被写体
 iPhoneあるからデジカメ要らなくなった→あげる、とCanonのEOS Kiss X5(レンズキット)を貰いました。確かにスマホのカメラが高機能になったので、デジカメの出番はめっきり減りました。記録用ならスマホで十分で、運動会など望遠が要る時だけデジカメです。
 EOS Kiss X5ですが、2011年の発売ですから8年前のカメラ →概ね現用のOlympus E-PL1sと変わらない。1800万画素、連射3.7コマ/秒、ファインダー有り、液晶可動、付属のズームは18~55mm、55~250mm、あとはよく分からない →それにしてもデカイ!。取り敢えずファームウェアをアップデートし(1.0.1→1.0.3)、EOS Utilityをインストール。で試写、
55mm                250mm
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ヒョウモンチョウの仲間        コゲラの仲間
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 望遠で野鳥が撮れたので満足。AFはオリンパスよりイイみたいです。冬に向けて葉が落ちるので、野鳥を狙ってみます

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映画 ヒッチコック 三十九夜(1935英) [日記(2019)]

三十九夜 [DVD]  原題はThe 39 Steps、三十九階段が何故か「三十九夜」。ヒッチコックのイギリス時代の作品です。
 冒頭、記憶術のショーが登場します。これがネタ振りで、ラストで辻褄が合ってきます。ショーの最中に拳銃発射事件が起こり、現場に居合わせたハネイは、事件に怯える女性アナベルを自宅に連れ帰ります。アナベルはスパイ組織「39階段」に追われていること、その組織がイギリスの国家機密を狙っていること、組織の親玉は小指の先が欠けていることを告げます。アナベルはナイフで刺され、次はあなたが殺されるとスコットランドの地図を残して事切れます。ハネイは、殺し屋から逃れ、アナベルが訪ねる予定だった地図に記された場所へ向かい、ヒッチコック得意の「まき込まれ型サスペンス」が始まります。

 ハネイは、列車で女性の残した地図に記された場所を訪ねます。この列車でパメラと知り合い、ハネイとパメラのコンビで事件が進行します。ハネイは殺人犯として警察から追われ、列車から逃亡。警察を振り切って目的の邸に着くと、そこで待っていたのは小指の先が欠けた教授と呼ばれる男。この男が39階段の親玉だったわけです。
 39階段は、国家機密を盗むためアナベルを雇っていたももの、既に手入、邪魔になった彼女を殺害したと思われます(たぶん)。真相を知ってしまったハネイも男に拳銃で撃たれますが、弾はポケットの本で止まって命拾い、ギャグのような展開です。

 ハネイは警察に駆け込むものの、教授の息のかかった署長はハネイを39階段の殺し屋に引き渡し、なんだかんだで(目まぐるしい展開で省略)パメラと手錠で繋がれて拉致されます。若い男女が手錠で繋がれたまま殺し屋から逃る、これが映画のハイライト?。駆け落ちの男女を装って宿屋に泊まり、手錠で繋がれて一夜を共にするわけですが、1935年の映画ですから期待するようなことは起こりません。殺し屋が宿屋まで追って来るも、宿屋の女将は駆け落ちの若い男女の味方で、殺し屋を追っ払ってくれます。殺し屋は教授に電話をかけ、教授がXX劇場へ行き国家機密を受け取って国外へ逃亡するという話までします。パメラはこの電話の話を盗み聞きしハネイの話を信用することになります。場当たり的な脚本ですが、話の進行上「間抜けなスパイ」が必要となったわけでしょう。

 ふたりはロンドンに戻り、パメラは警察に駆け込み、ハネイは教授が現れる劇場に向かいます。警察は機密文書の盗難は無いと断言し、39階段は何を盗んだのか?。劇場の舞台では記憶術のショーが演じられ、ハネイは機密文書は記憶術師の頭の中にあると見抜きます。ショーは観客の質問に記憶術師が答える形で進められ、ハネイは「39階段とは何か?」と質問し、記憶術師は思わず馬脚を現し教授に撃ち殺されます。こんな間抜けなスパイがいます?。39階段は機密情報を記憶術師に暗記させ、出国させて情報を運ぼうとしたのです。現在見るとアラが目立ちますが、『バルカン超特急』では、情報は音楽の旋律の形で、今回は「記憶」でオチを取ったわけです。『三十九夜』の後、『バルカン超特急』→『海外特派員』とドイツを仮想敵としたスパイ物が続きます。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ロバート・ドーナット、マデリーン・キャロル

当blogのヒッチコック 
バルカン超特急(1938英) マーガレット・ロックウッド マイケル・レッドグレイヴ 
海外特派員(1940) ジョエル・マクリー ラレイン・デイ
レベッカ(1940)ジョーン・フォンテイン ローレンス・オリヴィエ
疑惑の影(1943) テレサ・ライト ジョゼフ・コットン
逃走迷路(1942)ロバート・カミングス プリシラ・レイン
汚名(1946)イングリッド・バーグマン ケイリー・グラント
パラダイン夫人の恋 (1947) グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ
裏窓(1954)ジェームズ・ステュアート グレース・ケリー
ダイヤルMを廻せ!(1954) グレース・ケリー レイ・ミランド
めまい(1958)ジェームズ・ステュアート キム・ノヴァク
北北西に進路を取れ(1959)ケーリー・グラント エヴァ・マリー・セイント
サイコ(1960)アンソニー・パーキンス ジャネット・リー
(1963) ロッド・テイラー ティッピ・ヘドレン
マーニー(1964)ティッピ・ヘドレン ショーン・コネリー
引き裂かれたカーテン(1966)ポール・ニューマン ジュリー・アンドリュース
フレンジー(1972)ジョン・フィンチ バリー・フォスター
ファミリー・プロット(1976) バーバラ・ハリス ブルース・ダーン

番外
サイコ2(1983米)
ヒッチコック(2012)

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柿 収穫 [日記(2019)]

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WBイマイチ。庭の柿を収穫。渋抜きをどうしようかと思案中、焼酎か干し柿か...。

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橋本大三郎 大澤真幸 ふしぎなキリスト教 ② (2011講談社) [日記(2019)]

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)  続きです。イエスには、史的イエス「ナザレのイエス」と、宗教上の「イエス・キリスト」があります。キリストというのは救世主ということで、「ナザレのイエス」を救世主と考えた信仰上のイエスが「イエス・キリスト」。この二人のイエスを分けて考える必要があります。
 ユダヤ教は、異民族の侵入や戦争で共同体が壊れ、「ぐちゃぐちゃ」になった社会から生まれた弱者の論理として登場した(とは書いていませんが)、これが個人的な理解です。ぐちゃぐちゃになっても、人間が人間らしく連帯して生きていくにはどうしたらいいかの戦略が、ヤハウェを信仰する一神教、ユダヤ教。預言者イエスが現れ、ユダヤ教を改革してキリスト教を打ち立てま。

ナザレのイエス
 いよいよイエスの登場です。福音書には、イエスの事蹟(伝道)と死と復活が書いてある。イエス(ナザレのイエス)は実在したのか?、福音書以外歴史的な証拠はないらしい(復活したから墓も無い)。橋爪さんによると、四つの福音書に記されたイエスの言葉は、

比喩が豊富で、生き生きとした印象を受ける。ひとりの人間がそこにいるという手応え、ありありとした人格の一貫性を感じる。イエスが実在しないのに、福音書の著者たちがよってたかって創作したと考えるほうが、よっぽど不自然だと思うのです。

 まぁいたことはいたらしい。イエスは、ナザレで生まれた大工の息子。ユダヤ教を学んでナザレを出、洗礼者ヨハネの洗礼を受け彼の教団に入る。その後教団を離れ弟子を連れてガラリア湖周辺で伝道し、パリサイ派(律法派)、サドカイ派(祭司)とトラブルを起こし、エルサレムで逮捕され死刑となった。これが史的イエスの実像らしいです。新訳聖書に記される処女懐妊、ダビデに連なる家系、イエスがメシア(救世主、キリスト)であること、死後の復活、などは旧約に合わせた脚色。

ユダヤ教の革新運動
 当時のユダヤ教の宗教者は、儀式を司る祭祀(後のサドカイ派)、律法学者(後のパリサイ派)、預言者があり、イエスは、ヤハウェの言葉を伝える預言者の系譜と考えられます。イエスはガラリヤ地方でどんな活動をしていたか。預言者が神の言葉を直接伝えるのに対し、イエスは自分の言葉で、例えば比喩を使って神の言葉を伝え、(旧約)聖書をたぶん独自の解釈で説いていたユダヤ教の革新運動らしい。
 律法(神の言葉)が固まって(旧約)聖書として完成されると、預言者が現れて新たに神の言葉を伝えると律法学者は困るわけで、パリサイ派は預言者を弾圧し裁判に訴え処刑してしまう。洗礼者ヨハネも殺されています。イエスは自分の言葉で語りおまけに奇跡まで起こしているので、神を騙り神を冒涜した罪でパリサイ派、サドカイ派の牛耳る「最高法院」で裁判にかけられ死刑となります。イエスは自分をメシア=神の子とは言っていないが、民衆はイエスをメシアと呼びイエスもそう呼ばれることを否定しなかった?。
 バビロン捕囚の前後からメシア(救世主)信仰が生まれる。ユダヤ民族の苦境を救ってくれる人物がヤハウェによって遣わされるというメシア待望信仰が起こる。メシアの別名は「人の子」。民衆はイエスこそがメシアではないかと言い、イエス自身も、人間の子と救世主の両義性としてこの「人の子」を使っていたらしい。

 イエスが十字架にかけられあっけなく死に、旧約の伝承にある復活もなかった、イエスはメシアではなかったと、イエスグループは求心力をう失い十二使徒、信者はバラバラになります。
 これがイエス・キリストではない「ナザレのイエス」の生涯。

イエス・キリスト
 ユダヤ教は、神との契約である厳格な律法を守ることを説きます。律法はユダヤ民族には通用するが、イエスの説法を聞く非ユダヤ人には当てはまらない。で、律法の代わりにイエスが説いたのが愛、愛が神との契約書になった(らしい)のですが、ピンとこない。「汝の隣人を愛せよ」というアレです。キリスト教がユダヤ教から離陸するためには、ローカル・ルールを脱してグローバルなルールを作る必要があったわけです。で律法を破棄したかと言うと、旧約という形でこれも残している。

 イエスが現れてその教え(ユダヤ教のイエス・ヴァージョン)は非ユダヤ民族の間にも広まります。ユダヤ教の神でユダヤ民族と契約しているヤハウェは、非ユダヤ民族も救う必要が出てきた。そこでヤハウェはルールを変えて、ヤハウェを信仰する個人を救うことにした。ユダヤ教がキリスト教に衣替えした転換点がイエスの死と復活。イエスは人間(人類)の罪を背負って磔刑となった、という理屈が出来上がります。これをでっち上げたのがパウロ。何故人間の罪を背負って死ぬことが贖罪となるのか新訳にも書いてないらしい。橋爪さんはこれを「眼には眼を」の同害報復説で説明します。
 人間は罪があるから、罰としてヤハウェに破滅させられてしまう。ところが、人間として生まれたイエスが「私が替わって死にます」と人間の罪を引き受けて、十字架で死んでしまった。すると、処罰がすんでしまって、人間を罰するわけにはいかない。人間は罪があるままに赦されるのです。

 イエスが死ぬことで、ユダヤ民族救済の契約が人間個々人の救済の契約となり、キリスト教が誕生すわけです。
イエスは神の子だったんじゃないですか?と大澤さんが突っ込みをいれると、

たしかに、マッチポンプのようにもおもえるけれどそれが神の計画であり、イエスをこの世に送った理由ですよ。

大澤さんの感想はというと、

…ちょっとピンとこないところもある。ピンとこないというのは、あえて言うと、神様というのはなかなユニークな性格の方ですね、ということなんですが(笑)。
 こういう辺りが対談の面白いところ。私もピンときませんが。

 聖書の知識が無いのでこの第二部はピンときませんが大雑把に言うと、
 ユダヤ教の預言者「ナザレのイエス」は、自らの言葉で神について語りかけ、律法を愛に置き換え、非ユダヤ民族を含む民衆はイエスを支持した。自らを「人の子」(ユダヤ民族の間では救世主)と称し、イエスを救世主とするこのグループは勢力を持つようになった。これを無視できないパリサイ派(サドカイ派も)は、イエスを神を騙り民衆を惑わした罪で訴え、自ら主催する法廷で死刑を宣告。ユダヤ属州の行政を司るローマ帝国はイエスを磔刑にした。イエスが死んでも彼の残した思想は生き残り、パウロによってキリスト教が体系化され組織化され普遍的な宗教に脱皮した。

 ということになります。いまひとつピンときません…。第三部に続きます

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映画 死霊館(2013米) [日記(2019)]

死霊館 [DVD]  原題: The Conjuring。conjureには、「呪文(じゆもん)を唱えて呼ぶ、魔法を使って(…を)取り出す、魔法で追い払う、祈願する」という意味があるそうですから、文字通り「悪魔祓い」、エクソシズム。
 ロジャー、キャロリン夫妻と5人の娘の一家が引っ越した屋敷で、悪魔に憑りつかれるホラーです。一家が惨殺された家に引っ越す『フッテージ』も同じ設定です。
 ロジャー一家を救うのが、数々の心霊事件を解決したウォーレン夫妻。心霊現象研究家で民間エクソシストのエド・(トリック・ウィルソン)と妻で霊能者のロレイン(ヴェラ・ファーミガ)。ウォーレン夫妻は実在の人物だそうです。

 不思議な現象が次々と一家に起こります。飼い犬が家に入ることを拒み翌日死体で発見され、鳥が家にぶつかって死ぬ。異音が聞こえドアがひとりでに開閉、家中の時計が午前3持7分で止まる。はキャロリンの身体に謎のアザが現れ、幼い娘は夢遊病で徘徊し、いるはずもない少年と友達になる。でウォーレン夫妻登場となります。

 『エクソシスト』の悪魔はイラクの遺跡から、『オーメン』のも中東の悪魔も墳墓から復活しましたが、『死霊館』の悪魔はアメリカン。またも「セイラム魔女裁判」が関係しているらしい。19世紀中頃にこの家を建てた人物の妻が親族が「セイラム魔女裁判」に関係して死亡。その妻は我子を生け贄にし、悪魔に忠誠を誓って庭の木で頚を吊って自殺、死亡時刻は午前3時7分。その後の館の持ち主は息子が失踪、母親は地下室で自殺。他にも池で溺死した少年、自殺したメイド等々。ロジャー一家はとんでもない家に引っ越したことになります。そして、ウォーレン夫妻vs.悪魔の壮絶な闘いが始まります。

 「セイラム魔女裁判」はアメリカのホラー映画の定番?。この事件が現れるホラーには『クルーシブル』『サイレントヒル』『ジェーン・ドゥの解剖』があります。メイフラワー号からわずか400年のアメリカには、六条御息所の生き霊、菅原道真や平将門の怨霊に連なる「物の怪」の伝統がありません。従って中東から悪魔を借りてくるか、1692年のセイラム魔女裁判しかないわけです。

 最近読んだ『不思議なキリスト教』によると、サタンは「反対者」「妨害者」という意味、神への信仰を検証する存在。神の代理として地上を査察してまわる「係」のことらしいです(笑。神は決して姿を現しませんから、代わりにサタンが現れるわけでしょう。つまり神の弟子。「荒野の誘惑」でもサタンが現れますが、イエスを試し最後は尻尾を巻いて逃げるというカワイイ奴です。
 『死霊館』では、悪魔はキャロリンに憑りついてウォーレン夫妻の信仰を試し、夫妻の信仰が合格点だったので退散したんでしょうか(笑。

 ホラーと言っても、おどろおどろしい怨霊や悪魔が登場するわけではなく(少しは映りますが)、怪奇現象と音で恐怖を引き出そうという正統派ホラーです。
 ヒットしたようで、『死霊館』(2013年)の後『アナベル 死霊館の人形』(2014年)、『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)、『アナベル 死霊博物館』(2019年)とシリーズ化され、『死霊館のシスター』(2018年)→見ました、『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』(2019年)とスピンオフ作品まであるようです。
 ホラーは好きだがスプラッターは苦手という方似は、オススメです。

監督:ジェームズ・ワン
出演:ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン

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橋本大三郎 大澤真幸 ふしぎなキリスト教① (2011講談社) [日記(2019)]

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)  神も仏も信じていませが、「人間を惑わす」宗教というものが好きです(笑。世界を動かす「西洋」の根幹キリスト教を知れば世界が理解できる!、それに台頭著しいイスラムr世界も、というわけです。しかも新書一冊でという気楽な話です。

 本書は、二人の社会学者による対談で、大澤真幸が挑発的な質問を投げ、橋本大三郎がそれに答えるという形で、キリスト教に迫ります。中身は、

 第一部 一神教を理解する ~起源としてのユダヤ教~
 第二部 イエス・キリストとは何か
 第三部 いかに「西洋」をつくったか

 以下メモみたいなものです。信用しないように…。

ユダヤ教
・聖書は旧約(ユダヤ教)と新訳(キリスト教)から成り立っており、両者はほとんど同じで、神(ヤハウェ、エホバ)を戴く一神教の聖典
・旧約新訳の違いはキリストがいるかいないかの差。キリスト教は、バラモン教を否定して仏教が生まれたような成立過程ではなく、ユダヤ教を「取り込んで」成立している
・ユダヤ教の神ヤハウェは、神→預言者→民衆というルートで神の声を伝え、イエスはこの預言者の系譜に属する
 というのが前提です。しからば、ユダヤ教とは何か?

 ユダヤ教は、ユダヤ人の宗教→当たり前。ユダヤ人(放牧民)が何処にいたかというと、現在のパレスチナ、
・エジプトとメソポタミア(バビロニア、アッシリア)という大国に挟まれたカナンに居住していた
・ヤハウェは数ある神々の一つに過ぎなかった
・大国の侵略を受ける間に、破壊と怒りの神ヤハウェが軍神として信仰され、ダビデ、ソロモンなどの王の守護神となった

 ユダヤ民族は戦争には指導者の「王」がいたほうがいいと考えで王を決めますが、面白いのは預言者によって王が決められること。日本史だと、秀吉、家康のように武力によって王が誕生するのですが、ユダヤ民族はヤハウェが預言者を通じて王を決める。王権神授説はこうした背景から生まれたんでしょうか。ユダヤ民族は、ヤハウェを信仰すれば戦争に勝てると考えているので、ヤハウェ信仰を本書では「安全保障」上の契約に例えています。
 「安全保障条約」によってユダヤ民族が勝ったのかというと、連戦連敗。北のイスラエル王国はアッシリアに滅ぼされ、南のユダ王国はバビロニアに滅ぼされ、ユダヤ人はバビロンに拉致される(バビロン補囚)。民族が雲散霧消たわけですから、ヤハウェなどもう信じないとなるのが普通。ところがユダヤ人はヤハウェを捨てない。
 ユダヤ人はこれをヤハウェの課した「(神が人間を試す)試練」と考えるわけです。全能の絶対神ヤハウェは間違わない、だからバビロン補囚もヤハウェが意図をもって為した試練だ!。これは弱者の論理、「イジメられっ子」の負け惜しみ。60年経ってユダヤ人はエルサレムに帰るわけですから、試練と言えなくもない。あるいは、今は負けているが将来は勝つはずだ、また勝ったアッシリヤ、バビロニアは本当は堕落しとる、正義は我々にあるな等々(ニーチェの「奴隷道徳」)。

 強がりを言ってもユダヤ民族はバビロンで奴隷となるわけです。彼等は、ユダヤ民族がユダヤ民族であるという自覚を保つために、戒律=律法を厳しくし民族として団結します。何を食べてはいけないか、七日に一度は安息日とする、割礼もしなさいという民族のルール。これを守っていれば民族のアイデンティティは保たれ、民族が滅ぼされても国家の再建は可能。イスラエル建国は、この戦略の成果。
 神への仕え方は、
 ・儀式を行う →祭祀、後のサドカイ派
 ・戒律を守って暮らす→後のパリサイ派
 ・神の言葉を伝える預言者に従う
 の三つ。裁断、戒律が整備されると預言者は必要なくなり、預言者が現れると弾圧され殺される。洗礼者ヨハネもイエスもこの系譜で、最後は殺されます。

一神教、多神教
 仏教は、神などは存在せず、人間を含む自然界は因果律で成り立っている。宇宙も生態系も自然法則に支配されているに過ぎない。その法則を徹底的に理解した人物ゴータマ・シッダルタが仏(ブッダ)となった。宇宙の法則を認識し、法則と調和した状態が涅槃。
 儒教も自然の後ろに神は考えず、自然は人間をコントロールすべきものと考える。コントロールの手段は政治であり、政治的能力を持った人を訓練し自然をコントロールする。

 一神教は、世界のすべての出来事の背景に、人格を持つ神がいる。神は、意思があり、感情があり、理性があり、記憶があり、言葉を持つ(光あれなど)。従って、一神教の神とは会話が成り立つ。人間が幾度語りかけても神は「沈黙」しているだけで答えはあるはずはなく、この不断の一方通行のコミュニケーションを、祈り、信仰という。
    災害で子供を失った母親は、何故私の子供は死んだかと神に問い、答えは得られない。自問自答の果にこれは「試練」だと考え、試練を与えるほどだから神は私を見ていると考える。また試練!。人間が苦しむ存在であるなら、弱者の論理、イジメられっ子の負け惜しみから出発したユダヤ教は、案外本質を突くところから出発したのかも知れません。人間精神の安全弁。

 ホラーは好きですから悪魔、サタンの存在は重要です(笑。完全無欠の神が悪魔など作るわけはない。サタンは「反対者」「妨害者」という意味、神への信仰を検証する存在で、神の代理として地上を査察してまわる「係」のこと。神は姿を現しませんから、代わりにサタンが現れる。「荒野の誘惑」でサタンが現れ、イエスを試し最後は尻尾を巻いて逃げるというのも査察で、少女に取り付いてエクソシストに追い出される悪魔も神の代理?、笑いますね。

 「§13 権力との独特の距離感」も面白いです。ユダヤ教は、人間が権力を持つことを警戒し、権力を肯定しない。神の意思を体現する預言者が王となる人物を指名し、部族社会のリーダーである長老がこれに同意を与え、王が神に背く行動をとると預言者が批判するというシステムを持っていた。神が認め民衆(長老)が同意するという民主主義に近い体制。絶対神ヤハウェがいるからとれるシステム。
 預言者が王になりたい人間王になった者と結託する危険がなかったのか?。民衆が、「アイツ偽モンでっせ」と長老に耳打ちし長老が同意しなければ王にはなれません。また預言者は民衆の中から現れおまけに無報酬、なりたい人間がなれるわけではなかった。預言者は神の言葉を民衆に伝える人間ですから、預言者の言葉を民衆が信じなければ預言者にはなれない。これを民主主義の萌芽と見るかどうか。

 以上は第一部のさわりで、「原罪とは何か」「全知全能の神がつくった世界に、何故悪があるのか」などアクロバチックですが面白い話が詰まっています。第二部はいよいよイエス・キリストとは何か。
 続く

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絵日記 運動会 [日記(2019)]

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映画 ミケランジェロ・プロジェクト (2014米独) [日記(2019)]


ミケランジェロ・プロジェクト [DVD] 原題、The Monuments Men。ナチスの略奪美術品を取り戻す連合軍の特殊チームを描いたものです。ヒトラーは美術学校を2回落ちた元画学生で、侵攻占領した国の美術館やユダヤ人から美術品を奪いドイツに運び込んでいました。映画にも登場しますが、中でもヒトラーの右腕ゲーリングが熱心?で、略奪した絵画で自宅を美術館にしていたそうです。ナチスはピカソやセザンヌ、ゴーギャンなどの絵を「退廃芸術」として弾圧していますが、ゲーリングは退廃芸術も収集していたというから、ヒトラーより眼が肥えていたことになります。 

ドイツの敗戦が色濃くなった1944年、ハーバート大学附属美術館のストークス(ジョージ・クルーニー)は、戦火にさらされているヨーロッパの建造物、美術品の保護を訴えてミケランジェロ・プロジェクト、正確には”Monuments, Fine Arts, and Archives program”を立ち上げます。この組織を映画向きに翻案すると、ナチスが奪った美術品を取り戻す『ミケランジェロ・プロジェクト』というストーリーとなります。

 ストークスはメンバーを集めます。メトロポリタン美術館の学芸員グレンジャー(マット・デイモン)、シカゴの建築家キャンベル(ビル・マーレイ)、美術鑑定家、収集家のサヴィッツ(ボブ・バラバン)、彫刻家、イギリス人の歴史家、フランス人の美術商。7人の専門家に加えて、通訳兼運転手のドイツ移民の米兵エプスタイン。「オーシャンズ11」ならぬ「ストークス8」で、『7人の侍』『荒野の7人』『黄金の7人』の美術版です。

 映画は主に三つのパートから成り立っています。ひとつがベルギー・ブルージュの聖母教会から略奪された「ミケランジェロの聖母子像」、もうひとつがベルギー・ヘントのバーフ大聖堂の祭壇画、三つ目がジュ・ド・ポーム美術館学芸員シモーヌ(ケイト・ブランシェット)。ナチスは、パリで略奪した美術品をポーム美術館に集め整理してドイツへ送っていたため、パリが開放されドイツ軍が去った後シモーヌが略奪美術品の全貌を知る唯一の人物です。
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 ストークたちはノルマンディーからフランスに上陸し、略奪美術品を追ってパリ、ベルギーのヘント、ブルージュ、ドイツのアーヘンへとそれぞれヨーロッパ中に散ってゆきます。

 ミケランジェロ・プロジェクトを阻むのが、第三帝国崩壊にあたっては総てを破壊せよというヒトラー「ネロ指令」と、賠償目的でナチスの財宝を略奪するソ連軍。第二次世界大戦が終っても略奪美術品は安泰ではなく、時間との闘いでもあるわけです。

 ストークスたちは、シーゲンの銅鉱山の坑道、メルカースの岩塩坑で次々に美術品を見つけ、おまけにナチスの100トンの金塊まで発見します。金塊発見は話題となり、パットン、ブラッドレー将軍が出席して大々的にマスコミ発表が行われますが、レンブラントやルノワールの絵画やロダンの彫刻が発見されても話題ともなりません。
 ドラマに乏しい映画ですが、ラストは少しサービス。ポーム美術館の学芸員シモーヌの作った台帳が発見され、祭壇画はアルトアウスゼーの岩塩坑に隠されていることが分かり、プロジェクトチームはアルトアウスゼーへ向かいます。当地はソ連の占領下におかれるため、米軍には撤退命令が出ており、ソ連軍の進駐と競争で美術品の撤収が行われます。祭壇画とミケランジェロの聖母子像が発見され、めでたしメデタシ。

 事実に基づいた映画らしいのですが、それ故か、ミステリーもサスペンスもアクションもありません。美術品探索ですからトレジャーハンター、相手がナチスですからもう少しハラハラ、ドキドキがあってもよさそうなもの。美術品の価値に比べ、映画は至って平板。ケイト・ブランシェット演じるシモーヌにしても埋もれてしまって存在感がありません。いっそうのこと、イギリス人のジェフリーズが犠牲となる「ミケランジェロの聖母子像」に絞ってサスペンスに仕立てたほうがよかったのではないかと思います。

 ナチスの略奪美術品を扱った映画に、『黄金のアデーレ』があります。クリムトの名画の返還を求め、訴訟を起こしたユダヤ人女性の実話を基にしたものですが、こちらの方が「略奪美術品」については説得力があります。
 2012年ミュンヘンのアパートから1,200点を超えるピカソやシャガールの絵が発見されニュースになりました。いずれも「退廃芸術」としてナチスが排除した絵画で、略奪美術品と見なされています。
 映画で、ジュ・ド・ポーム美術館学で美術品をドイツに送っていた将校のエピソードが描かれています。将校は「退廃芸術」のルノワールやマネをクスね、敗戦後レプリカとして自宅に飾っていたいたのですが、プロジェクトのメンバー、サヴィッツに本物と見抜かれて御用。現在でも何処かの家の居間に、略奪美術がそれとは知られず飾られているのかも知れません。ナチスによって60万点もの美術品が略奪され、10万点が未だに行方不明だそうです。
 映画としてはあまりお薦めしませんが、「略奪美術品」という意味では見て損はありません。

監督:ジョージ・クルーニー
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ケイト・ブランシェット

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HUAWEI P20 LiteにPOBox 5.4 [日記(2019)]

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 HUAWEI P20 Litの日本語入力はiWnnがデフォルトで入っています。使い辛いのでGoogle日本語を入れたのですがイマイチ。QWERTで使うためタイプミスが多いので、Xperiaで使い慣れたPOBox5.4を入れてみました。android9とPOBox5.4の組み合わせです。
 Evernoteに長文入力をすることが多いのですが、タイプミス、隣のkeyをタッチするミス、が大幅に減り快適です。1日使っていますが、今のところ不具合は起きていません。変換効率がやや不満ですが、広辞苑と辞書登録で何とかなりそうです。

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