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映画 ミケランジェロ・プロジェクト (2014米独) [日記(2019)]


ミケランジェロ・プロジェクト [DVD] 原題、The Monuments Men。ナチスの略奪美術品を取り戻す連合軍の特殊チームを描いたものです。ヒトラーは美術学校を2回落ちた元画学生で、侵攻占領した国の美術館やユダヤ人から美術品を奪いドイツに運び込んでいました。映画にも登場しますが、中でもヒトラーの右腕ゲーリングが熱心?で、略奪した絵画で自宅を美術館にしていたそうです。ナチスはピカソやセザンヌ、ゴーギャンなどの絵を「退廃芸術」として弾圧していますが、ゲーリングは退廃芸術も収集していたというから、ヒトラーより眼が肥えていたことになります。 

ドイツの敗戦が色濃くなった1944年、ハーバート大学附属美術館のストークス(ジョージ・クルーニー)は、戦火にさらされているヨーロッパの建造物、美術品の保護を訴えてミケランジェロ・プロジェクト、正確には”Monuments, Fine Arts, and Archives program”を立ち上げます。この組織を映画向きに翻案すると、ナチスが奪った美術品を取り戻す『ミケランジェロ・プロジェクト』というストーリーとなります。

 ストークスはメンバーを集めます。メトロポリタン美術館の学芸員グレンジャー(マット・デイモン)、シカゴの建築家キャンベル(ビル・マーレイ)、美術鑑定家、収集家のサヴィッツ(ボブ・バラバン)、彫刻家、イギリス人の歴史家、フランス人の美術商。7人の専門家に加えて、通訳兼運転手のドイツ移民の米兵エプスタイン。「オーシャンズ11」ならぬ「ストークス8」で、『7人の侍』『荒野の7人』『黄金の7人』の美術版です。

 映画は主に三つのパートから成り立っています。ひとつがベルギー・ブルージュの聖母教会から略奪された「ミケランジェロの聖母子像」、もうひとつがベルギー・ヘントのバーフ大聖堂の祭壇画、三つ目がジュ・ド・ポーム美術館学芸員シモーヌ(ケイト・ブランシェット)。ナチスは、パリで略奪した美術品をポーム美術館に集め整理してドイツへ送っていたため、パリが開放されドイツ軍が去った後シモーヌが略奪美術品の全貌を知る唯一の人物です。
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 ストークたちはノルマンディーからフランスに上陸し、略奪美術品を追ってパリ、ベルギーのヘント、ブルージュ、ドイツのアーヘンへとそれぞれヨーロッパ中に散ってゆきます。

 ミケランジェロ・プロジェクトを阻むのが、第三帝国崩壊にあたっては総てを破壊せよというヒトラー「ネロ指令」と、賠償目的でナチスの財宝を略奪するソ連軍。第二次世界大戦が終っても略奪美術品は安泰ではなく、時間との闘いでもあるわけです。

 ストークスたちは、シーゲンの銅鉱山の坑道、メルカースの岩塩坑で次々に美術品を見つけ、おまけにナチスの100トンの金塊まで発見します。金塊発見は話題となり、パットン、ブラッドレー将軍が出席して大々的にマスコミ発表が行われますが、レンブラントやルノワールの絵画やロダンの彫刻が発見されても話題ともなりません。
 ドラマに乏しい映画ですが、ラストは少しサービス。ポーム美術館の学芸員シモーヌの作った台帳が発見され、祭壇画はアルトアウスゼーの岩塩坑に隠されていることが分かり、プロジェクトチームはアルトアウスゼーへ向かいます。当地はソ連の占領下におかれるため、米軍には撤退命令が出ており、ソ連軍の進駐と競争で美術品の撤収が行われます。祭壇画とミケランジェロの聖母子像が発見され、めでたしメデタシ。

 事実に基づいた映画らしいのですが、それ故か、ミステリーもサスペンスもアクションもありません。美術品探索ですからトレジャーハンター、相手がナチスですからもう少しハラハラ、ドキドキがあってもよさそうなもの。美術品の価値に比べ、映画は至って平板。ケイト・ブランシェット演じるシモーヌにしても埋もれてしまって存在感がありません。いっそうのこと、イギリス人のジェフリーズが犠牲となる「ミケランジェロの聖母子像」に絞ってサスペンスに仕立てたほうがよかったのではないかと思います。

 ナチスの略奪美術品を扱った映画に、『黄金のアデーレ』があります。クリムトの名画の返還を求め、訴訟を起こしたユダヤ人女性の実話を基にしたものですが、こちらの方が「略奪美術品」については説得力があります。
 2012年ミュンヘンのアパートから1,200点を超えるピカソやシャガールの絵が発見されニュースになりました。いずれも「退廃芸術」としてナチスが排除した絵画で、略奪美術品と見なされています。
 映画で、ジュ・ド・ポーム美術館学で美術品をドイツに送っていた将校のエピソードが描かれています。将校は「退廃芸術」のルノワールやマネをクスね、敗戦後レプリカとして自宅に飾っていたいたのですが、プロジェクトのメンバー、サヴィッツに本物と見抜かれて御用。現在でも何処かの家の居間に、略奪美術がそれとは知られず飾られているのかも知れません。ナチスによって60万点もの美術品が略奪され、10万点が未だに行方不明だそうです。
 映画としてはあまりお薦めしませんが、「略奪美術品」という意味では見て損はありません。

監督:ジョージ・クルーニー
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ケイト・ブランシェット

タグ:映画
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