SSブログ

ジョージ.R.R.マーティン 七王国の玉座 下 (2002早川書房) [日記 (2020)]

ウェスタロス2.jpg
続きです
小鬼(インプ)
 特異なキャラクターが三人登場します。ひとりはエダード・スタークの私生児ジョン。もうひとりが、小人症で小鬼(インプ)と呼ばれるラニスター家の次男ティリオン。ジョンは私生児という負い目を背負ってスターク家を出てナイツウォッチに入団します。一方のティリオンは、小人症というハンディーをバネに名門貴族の出自をバックに人生に立ち向かいます。ジョンとティリオンの会話、

「道化師の伝統のおかげで、おれはおかしな服を着て、どんなに汚いことでも、頭に浮かんだことを口にしてもいいという特権があるのさ」にやりと笑って、
「とにかく、おまえは私生児だ」「ちょっとした助言を与えてやろう、私生児」
ラニスターはいった。
「自分の出自を絶対、忘れるんじゃないぞ。世間は決して忘れてはくれないからな。それを自分の強みにするんだ。そうすれば、決して弱点にはならない。それを鎧にするのさ。そうすれば、それは決しておまえを傷つける道具にはならない」

ジョンは他人に助言を求める気分ではなかった。
「私生児がどんなものか、わかっているんですか?」
「小人はみんな、父親の目から見れば私生児なのさ」

 三人目は、塔から墜ちて半身不随となったスターク家の次男ブラン。彼は足を失った代わりに第三の眼を獲得し、後に大役を背負うことになります。もうひとりシオン・グレイジョイ。シオンの父親が反乱を起こし、エダードが人質として預かり養育しています。シオンもまたストーリーを掻き回す重要な役柄を与えられます。私生児、小人、足萎え、人質というハンディーを背負った登場人物たちが、この物語の重要なパートを担うことになります。

謀反
 エダードは前”王の手(宰相)”の死の真相を探るうちに、ロバート王の三人の子供は正嫡子ではなく、王妃サーセイの不義の子であることを突き止めます。三人の子供の父親はサーセイと双子の弟ジェイム。後にドラゴンが登場するくらいですから、この物語は何でもありです。この事実を知ったため前”王の手”は何者かに殺されたわけです。エダードはこれをサーセイに告げ、王都から立ち去ることを勧め、いよいよラニスターvs.スタークの抗争が始まります。

 ロバート王が狩りで瀕死の重傷を負い、今わの際に、王子が成人するまでエダードを摂政に任命する遺言を残して死にます。正嫡でないジョフリーは王座に就けないと、エダードは後継にロバートの弟スタンニス・バラシオンを推し、サーセイは当然息子のジョフリーを立てようとします。よくある「お家騒動」です。この時、レンリー・バラシオンはエダードにクーデターを勧め、王の評議会メンバーであるヴェーリス公は王妃サーセイ側に付くことを勧めます。
 サーセイはいち早く行動を起こし、ジェフリーを玉座に座らせて既成事実を作り、遺言を無視してエダードを謀反人とて捕らえます。エダードは、クーデターを起こせば王位に付くこと出来たはず、サーセイに付けば王の手として地位も安泰だったはずですが、筋を通してスタンニスを王位に就かせようとしたためサーセイに先を越され、サーセイに破れたわけです。ラニスター家の血をひくジョフリーが新王となり、サーセイは摂政、サーセイの父タイウィン・ラニスターが王の手となり、サーセイの弟ジェイムが近衛騎士長となって、七王国の主バラシオン家はラニスター家に乗っ取られたことになります。

 ヴェリース
 スパイの長で宦官のヴェリースもジョン、ティリオンと同じ位相の登場人物。貧民街で生まれ奴隷に売られ宦官として成り上がった人物です。七王国各地にスパイを放ち、情報によって王の評議会の一員まで上り詰めます。ヴァリースは城の地下牢に囚われたエダードに食料を差し入れ、エダードが罪を認めて生き延びることを勧めます。

「教えてくれ、ヴァリース公。きみは本当は誰に仕えているのか?」
ヴァリースは薄笑いを浮かべた。「国家ですよ、あなた。失ったわたしの男根にかけて誓います。わたしは国家に仕え、国家は平和を必要としているしているのです」
「エダード公、教えて下さい・・・あなた方大貴族が王位争奪戦を演ずるとき、最も被害を受けるのは常に無辜の民であるのはなぜですか?」

 下層階級出身のヴァリースは、無辜の民を護るために国家に仕えていると言います。シルクを纏いスキンヘッドに化粧を施す怪物ヴェリースもまた、ティリオンの世界の住人かもしりません。

 エダードは人質となった娘のために罪を認めたものの結局反逆者として処刑され、長男ロブとケイトリンは兵を挙げます。

死人
 権力闘争の隙きに、七王国を脅かす脅威が北から起こります。壁の北に出かけたナイツウォッチの隊員が”ゾンビ”となって壁に戻り、ナイツウォッチの司令官を襲います。壁の北では、ヘラ鹿とマンモス(いるんだ!)が南や東に移動し、幾つもの野人の村が放棄され、野人の王が砦を築き戦士を集めていいます。冬の到来は死人を目覚めさせ、死人は人間世界へ侵攻を開始します。ロブの挙兵を聞いた野人のひとりは、ロブが向かう先は南ではなく北だと言います。

 七王国の玉座をめぐる争いにゾンビが絡んで、物語は展開します。第1部だけでも1000ページ弱、しかも2段組。全部で7部ですから長い!。

タグ:読書
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ: