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映画 ベロニカとの記憶(2017英米) [日記 (2020)]

ベロニカとの記憶(字幕版)  原題”The Sense of an Ending”。「終わりの感覚」?。小さなカメラ店を営むトニー(ジム・ブロードベント)の元に、弁護士から遺産相続の知らせが舞い込みます。遺産は、500ポンドと彼の古い友人エイドリアンが遺した日記で、被相続人はトニーが40年前の大学時代に付き合っていた恋人ベロニカの母親。何故元恋人の母親がトニーに500ポンドと日記を遺贈するのか?、というミステリアスな話がテーマなのですが、トニーの現在が重要な背景となります。トニーは妻と別れ気ままな一人暮らし、年金暮らしで半分趣味のようなライカ(フィルムカメラ)のカメラ店を営んでいます。一人娘は出産間近で、トニーはもうすぐ”父親のいない”孫を持つことになります。元妻との関係は良好で、ふたりでシングルマザーに挑戦する娘を支えています。
 ベロニカが日記の引き渡しを拒んだため、トニーは40年前の自分とベロニカ、友人エイドリアンとの三角関係を元妻に話し始め、映画はトニーの現在と過去が交差しながら進行します。
 
【パブリックスクール】
 トニーはパブリックスクール(高校)でエイドリアンと出会います。エイドリアンは早熟の秀才で、歴史の授業で「歴史が生まれるのは 不完全な記憶と文章が出会うときだ 歴史とは勝者の嘘だ」と学者の説を持ち出します。自殺した級友の自殺を例に、本人が語れない以上自殺の真相は不明であり、恋人を妊娠させたことが自殺の要因だ云うのは周囲の憶測に過ぎない、同様に歴史もまた想像の産物に過ぎない、と自説を展開します。
 
【ケンブリッジ】
 トニーとエイドリアンはケンブリッジへ進学し、トニーはパーティーでベロニカと出会い彼女の自宅に宿泊するまでにその仲は発展します。この時ベロニカの母親はトニーを歓待し、「ベロニカに振り回されるな」と忠告します。ベロニカは、デートはするが決して一線は越えず他の男とも付き合い、トニーは振り回されます。エイドリアンからベロニカとの関係を知らされたトニーは、嫉妬から悪意に満ちた手紙をエイドリアンに書き送ります。「彼女は人を操る女だ、彼女の母親にも忠告された、一度母親と話してみろ、いい女だぜ」と。その後エイドリアンは自殺し、トニーは、パブリックスクールの思い出から、エイドリアンはベロニカを妊娠させ行き詰まった果てに自殺したのだと推測します。
 
【現在】
 40年後、トニーは、不可解な遺産相続によって”ベロニカとの恋”を回想することになります。それはベロニカに翻弄され、エイドリアンの自殺まで絡むという青春の「ひとこま」です。トニーは、あれは「恋ではなかった」と元妻に告白します。
 トニーはベロニカ(シャーロット・ランプリング)に会いに行きます。ベロニカは日記を燃やしたことを告げ、トニーに一通の手紙を渡します。手紙は、トニーが嫉妬にかられてエイドリアンに送った悪意に満ちあの手紙でした。トニーはベロニカに知的障害を持つ青年がいることを知り、この青年がエイドリアンの息子だと考えます。ところが青年はベロニカの弟であり、ベロニカの母親とエイドリアンの子供だったのです。この事実はトニーに衝撃を与えます。
 
 トニーの手紙がベロニカとエイドリアンの恋に如何なる影響を及ぼしたのか?、エイドリアンとベロニカの母親をどう結びつけたのか?、映画では一切説明されません。ベロニカの母親がエイドリアとの間の子供を産んだ事実は何を意味するのか。ベロニカは何故手紙をトニー返したのか?、ベロニカの母親は何故エイドリアンの日記をトニーに遺贈しようとしたのか、日記には何が書かれていたのか。何一つ明かされませんが、いずれにしろ、青春の「悔悟」の物語であることは確かなようです。人は悔悟を重ねることによってしか成熟し得ないのかも知れません。歴史が勝者によって書かれるように、「記憶」もまた
 
人は人生を語る時、過去を装飾し都合よく編集する、長生きすれば異を唱える証人も減る、それは事実と言うより”物語”だ、自分を納得させるために書き変えた物語。
 
 1970年代?の青春をノスタルジックに描き、アンタの思い出は自分に都合よく編集した思い出だと冷水を浴びせ、まぁそれでも終わりよければ全てよし、みたいな映画です。
 
監督:リテーシュ・バトラ
出演:ジム・ブロードベント シャーロット・ランプリング

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