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映画 天使の入江(1963仏) [日記 (2021)]

天使の入江 ジャック・ドゥミ DVD HDマスター  原題”La Baie des Anges”、ギャンブルにのめり込む男女を描いたラブストーリー。ラブストーリーには違いないのですが、ギャンブルにうつつを抜かす女と、性悪女を愛した男の物語です。

 銀行員のジャン(クロード・マン)は同僚に連れられて初めてカジノに足を踏み入れ、ルーレットで1時間で50万フランの金を手にします。これを元手に大儲けして銀行員の生活から脱出しようと、ジャンは休暇を取りギャンブルのためニースに向かいます。これを聞いた父親は、借金の尻拭いはしない、ギャンブラーになるのなら出ていけ!、と。ジャンは、ギャンブルに溺れるようには見えず、何処から見ても堅実な好青年という設定です。

 ニースのカジノで出会うのがジャッキー(ジャンヌ・モロー)。くわえタバコで賭けに興じる姿はどう見ても一攫千金を夢見て賭博に溺れる女。ジャッキーは、最後に残ったチップをジャンと同じ数字に賭け、見事に当たりジャンに声をかけます。ジャンは勝っているところで切り上げる節度があり、ふたりはそれぞれ100万近い金を手にします。このギャンブルというのがルーレット。駆け引きも個人の技量も要らず、目が出るか出ないかは運次第という神の領域。ジャッキーに言わせると、「数字や偶然の神秘がある。もし数字が神の思し召しだ
 ジャッキーは、カジノで有り金を失い、友達に借金してパリに帰ろうと駅に来たが、又もカジノに戻り、敗けが込んでスッカラカンになったところにジャンが現れ一発逆転、これだからギャンブルは止められない。ギャンブルのため離婚され息子の親権もと取り上げられた、と悪びれる様子もなく話します。ジャンは、ギャンブル中毒の年増に捕まったというところでしょう。

 ジャッキーは、勝ちそうな予感がするとカジノへ向かい、今度は一銭残らず巻き上げられ、ジャンは寝る場所もないジャッキーを自分のホテルへ連れ帰り…となります。ギャンブルを介して一組のカップルが出来上がったわけです。

 翌日、ジャッキーはパリへの電車賃を友人から借金して、この金でルーレット。ジャンと二人で数百万フランの大儲け、さらにモンテカルロに行って大勝負となります。モンテカルロでは大負けに負けてまたも一文無し。何故そこまでギャンブルに拘るのかと問われたジャッキーは、「金が欲しいわけではない。ギャンブルの魅力は贅沢と貧乏の両方が味わえる」と。要は中毒だと思うのですが、ジャンヌ・モローの口から出ると何やらソレらしいw。

 愛している、もうパリに帰ろう、と告白するジャンに、ジャッキーは、私はギャンブルを止められない、この関係は長くは続かないと別れを切り出します。翌朝、ジャッキーは時計を売ってまたもカジノへ行き、すっからかんになったジャッキーは、中年の紳士に媚を売りギャンブルを続けようとします。この姿を見たジャンは「尻軽女、まるで娼婦だ」と言い放ちます。会ったばかりのジャンの部屋に泊まり、今また見知らぬ男に媚を売ってギャンブルを続けるですから、ギャンブルに溺れる尻軽女。ジャッキーに愛想をつかしたジャンは、パリに帰るためにカジノを出ますが、ジャッキーはジャンを追います。二人が抱き合ったロングショットでFin。この時ジャッキーは一文無しですから、勝っていれば追わなかった筈w。これがラブストーリーのFinかというと、ジャンとジャッキーの険しい人生の始まりのようなFinです。
 「天使の入江」とは、ニースの街の前に広がる海のこと。この入江でジャンはジャッキーという「天使」に出会うわけですから、皮肉なタイトルです。
フランス映画らしい、オシャレで辛口のラブストーリー。

監督:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン

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