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百田尚樹 有本香「日本国紀」の副読本(2018産経セレクト) [日記 (2021)]

「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史 (産経セレクト S 13)  「副読本」というので『日本国紀』の補完資料か何かだと思ったのですが、『日本国紀』の執筆、出版の楽屋裏を語った百田センセイと編集者(有本香)の対談です。

 『日本国紀』は、ケント・ギルバートとの対談がきっかけで生まれたそうです。同氏によると、アメリカの歴史教育は、それを学んだ子供たち誰もがアメリカを好きになり、アメリカに生まれたことを誇りに思う、喜びに思う、そうした歴史教育だそうです。片や日本の歴史教科書を読んでも、「日本に生まれてよかった!」とはとなりません。それなら日本に生まれてよかった!という日本の歴史をオレが書こうということで生まれたのが『日本国紀』だそうです。

 確かに「日本に生まれてよかった!」という教育は受けていません、どちらかと言うと「愛国」が日陰者とされる環境で育って来ました。もっとも、好太王碑や白村江の戦い、任那の日本府、山田長政の日本人町で、鎖国以前の日本はそこそこヤッていたんだと感じ、日清、日露戦争で日本人のアイデンティティを取り戻した思った途端、大東亜戦争の記述で日本人であるコンプレックスを植え付けられましたw。

 『日本国紀』によると、このコンプレックスはWGIPによって「刷り込まれた」ものだそうです。本書では山川の『日本史』が引用され、その偏向が批判されています。受験の定番、山川の教科書で日本史を学び、大学で(GHQに阿った)宮沢俊義のテキストを使ったのですから、WGIPの影響下で育ったようです。憲法第九条は絶対であり、改憲は反動という環境です。

 現在の歴史教科書は年表過ぎず、著者は、日本史を読んだ人がこの国はすばらしい、日本人であることに誇りを持てるような視点で、「物語」としての日本史を書こうとしたのです。物語りには「視点」が必要であると言います。物語=フィクションではありませんから、その手法は歴史の何を捨て(矮小化し)、何を取り上げるか(膨らませる)かです。

 例えば「日韓併合」をどう捉えるか。朝鮮総督府の創氏改名を皇民化政策、土地調査事業を収奪とすれば、日本は朝鮮にナント酷いことをしたんだろうといことになり、前者は戸籍と人口の、後者は国土の確定であるとすれば、戸籍と土地所有のあいまいであった朝鮮を近代化する施策となります。どちらを大きく書くかで歴史の方向は180度変わってきます。この辺りが通史の難しいところです。言ってみれば、歴史教科書は時の政府が国民に向けたプロパガンダと言えますが、日本人ですから「日本に生まれてよかった!」と思いたいですね。

 本書には隠しテーマがあり、「平和ボケ」「経済」「日韓問題」だそうです。「経済」では、荻原重秀を取り上げ「ケインズより200年早く原題のマクロ経済政策を取り入れた」と高く評価しています。「日韓問題」は言わずもがなで、これが『今こそ韓国に謝ろう』につながったそうです。
 『日本国紀』は批判も多い著作ですが、面白いです。

タグ:読書
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