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映画 ラストディール(2018フィンランド) [日記 (2021)]

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 [DVD]  原題はOne Last Deale(最後の大勝負)、フィンランド映画は当blog初見参。サブタイトルの「美術商と名前を失くした肖像」は、ジョゼッペ・トルナトーレの『鑑定士と顔のない依頼人』のパクリ。正確にいうと、「署名のない肖像画」ですが、原題の方が映画の内容を的確に表しています。
 
 ヘルシンキで小さな画廊を営むオラヴィはオークションで落札した絵の支払いもままならない貧乏画商。孫のオットーからはガラクタばかり集めていると揶揄される始末。オラヴィはオークションの下見会である肖像画に強く惹かれます。署名がないため制作者は不明、制作者不明の絵画はオークションでも安値取引されます。同業者はフィンランド絵画黄金期の作だがそれほどの価値はないと言い、オラヴィはロシア・ロマノフ朝の画ではないかと推理します。ロシアの著名な画家の作品であれば10万ユーロを下るまい、オラヴィは制作者を突き止め、この絵を落札して画商としての最後の花道を飾りたいと考えます。オークション、これがテーマ1
 
 オラヴィの孫オットーが画廊に現れます。最初は孫と気付かないあたりからオットーの家庭環境が見て取れます。オットーは絵画に魅せられる余り家族を省みず、子供や孫にも見捨てられたようです。
 オラヴィの娘が息子の職業訓練を依頼し、オットーが現れたわけです。職業訓練とは高校生が店や工場で職業を体験し、雇用主はそれを採点するという教育課程のようです。素行の悪いオットーは訓練先が見つからず、娘はオラヴィに頼んだのです。孫、これがテーマ2
 
 老人と孫は件の肖像画の制作者を探を始め、オットーは、10万ユーロで絵が売れればボーナスが入る!と皮算用。画廊で、オットーは絵をそつなく売り商売の才能を見せ、オラヴィは孫に画商の教育を始めます。夕日をバックに老人と子供が描かれた絵を前に、
 
腰の曲がった老人と手をつないでいる幼子、命を歩んできたものと歩みゆく者だ。人生を全うした者にしか描けない
オークションなら20万になる
 
オラヴィとオットーの姿そのままで、疎遠だった二人に次第に絆が生まれ始めます。

 オークションまであと日、二人は、図書館で画集や展示会のカタログ・目録を片っ端から調べ、「イリヤ・レーピン展」のカタログから肖像画はキリストを描いたレーピンの絵であることを突き止めます。写真が無いとレーピンの絵であることが証明できない!。オットーはnet検索でその絵がある人物から展示会に貸し出されたことを突き止め、その人物を老人ホームに訪ねます。親戚だと偽って部屋に入り、写真の載った本を見つけ出します。この辺りは謎解きのサスペンスでけっこう面白い。
 オークションが始まり、レーピンの絵は1300ユーロから1500、3000、5000と値が付き、ついに9000ユーロ。オークションのスリルは「ヤフオク」と同じですね(笑。オラヴィは10,000ユーロで競り落とします。ここからが大変、1週間以内に入金しないと流れてしまいますが金が無い。友人に借金を申し込み、銀行、娘に融資を断られ、ついに孫の貯金にまで手を付け、「貯金して金持ちになる者はいない、なれるのは投資した者だけだ」とか何とか言って4000ユーロ!。この金はオットーの学資として母親がコツコツと貯めていたもの。娘は、離婚して女手ひとつで息子を育ててきた、アンタは孫と娘に何ひとつしなかった!とオラヴィを手酷く詰ります。絵のために孫の学費に手を付けるアンタが悪い!。レーピンの絵はコレクターに12万ユーロの値が付き、ここからテーマ3「命を歩んできたものと歩みゆく者」の物語が始まります…。
 
 仕事というか趣味にウツツをぬかす爺さんと、放っぽり出された娘と孫の話です。そんな話が映画になるのか?、これがなるんです。オススメというほどではないですが佳作です。
 北欧の映画というとイングマール・ベルイマン(スェーデン)が思い浮かびますが、『特捜部Qシリーズ』『ボーダー 二つの世界』『幸せなひとりぼっち』『パペットの晩餐会』『やかまし村の子どもたち』『THE GUILTY/ギルティ』などなど多彩です。
 
監督:クラウス・ハロ 
出演:ヘイッキ・ノウシアイネン、ピルヨ・ロンカ、アモス・ブロテルス

タグ:映画
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