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映画 ザ・ハント(2020米) [日記 (2021)]

ザ・ハント [DVD]  原題、The Hunt=狩り。リベラルな富裕層が保守派庶民を拉致して「狩る」という、狩る側ではなく狩られる側から描いたサバイバル映画です。
 トランプが人種差別的だ、分断を助長すると非難し(アンタがよく云うよ!)、銃撃事件が相次いだため一時お蔵入りとなっていた曰く付きの映画です。トランプが非難するぐらいですから、人種差別というより痛いところを突かれたんでしょう。トランプの嫌いな映画は好きになれそう、その辺りを重点的に観てみました(笑。

 12人の男女は、目覚めると猿ぐつわを噛まされて草原にいる自分を発見します。草原の真ん中に木箱があり中には大量の銃器(と子豚 →これも何かの象徴なんでしょう)、まもなく銃撃戦が始まります。ひとりまた一人と殺されます。登場人物も観客も、ここは何処?何故誘拐された?撃ってくるのは誰?と謎だらけ →この手の設定はありましたね、『メイズ・ランナー』とか。

 3人が森を抜けてガソリンスタンドに助けを求め、ここがアーカンソー州だと分かります。3人はNY州スタテン島、ワイオミング、オーランド(フロリダ州)から拉致されたと言ってます。いずれも共和党の強い地域です。NY州の男は、オレは自宅に銃を7丁の持っている銃の所持は憲法で保証されていると言ってますから、全米ライフル協会の支持者かも。拉致された12人はいずれもトランプ支持?。この間、店のTVは地球温暖化はフェイクだというニュースを流す芸の細かさ。
 3人は、拉致者「ハンター」側のガソリンスタンドの店主夫婦に殺され、いよいよヒロイン・クリスタル(ベティ・ギルピン)の登場となります。ちなみに彼女は「スノーボール」とハンターから呼ばれています。クリスタルは店の主人がハンターであることを見抜き、有無を言わさず射殺。兵士としてアフガンに派遣されていたとかでめっぽう強い。

 クリスタルと生き残った男は貨物列車に乗り込みます。列車に潜んでいたのは不法移民で着いた先は移民キャンプ。遠くに「壁」が写り込んでいますw。男は、不法移民も移民キャンプもヤラセでこれは陰謀だ!とキレ、クリスタルはここはクロアチアだと推理します。このシークエンスで、不法移民と陰謀論のアイコンが示され、クリスタルはミズーリ州から拉致されたことが明かされます(ミズーリ州も共和党)。

 ここで話は1年前に戻り「人間狩り」の背景が明かされます。巨大企業の経営幹部たちが冗談で「人間狩り」をメールで話題にします。これを知った誰かがSNSで拡散させ「年に一度リベラル・エリートが我々みたいな庶民を誘拐、バーモント州の館で人間狩りを楽しんでいる」という陰謀論(Qアノンみたいな?)に発展し、そのため、企業のCEOアシーナ(ヒラリー・スワンク)は辞職やむ無しに至ります。ヒラリー・スワンクは冒頭から正体を明かさず思わせぶりに登場する反保守のアイコンです。アシーナは、陰謀論を拡散させた中から12人を選んでアーカンソーかクロアチアに誘拐し、コイツラが拡散した陰謀論、人間狩り実際にやってみせたわけです。ラストは保守のアイコン・クリスタルとアシーナの対決となりますが、勝ったのはどっち?。

 アクション映画ですが、つまるところはトランプ元大統領とその支持者VS.トランプに対抗したリベラル層を皮肉ったパロディー。最後はクリスタルが勝つのですが、クリスタルが語る「ウサギとカメの寓話」のヒネリがありますから、全てはパロディーであり風刺。ウサギとカメが競争して最後には地道なカメが勝つのですが後日譚があり、カメの自宅を訪れたウサギはカメ一家を惨殺、結局強い奴が勝つのだという反御伽話。クリスタルのコードネーム「スノーボール」とはジョージ・オーウェル『動物農場』の主人公だそうです。同様の反トランプ映画には『犬ヶ島』がありこっちも楽しめます。

 アクション映画として十分に楽しめますが、映画にある風刺探しで二倍楽しめます。監督は『死の谷間』のクレイグ・ゾベル。

監督:クレイグ・ゾベル
出演:ベティ・ギルピン、ラリー・スワンク

タグ:映画
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