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映画 一度も撃ってません(2020日) [日記 (2022)]

一度も撃ってません [Blu-ray]  『団地』に続いて阪本順治、今度は石橋蓮司が主演で、大楠道代、岸部一徳も登場します。

本作は、阪本監督や石橋ら役者仲間が、今は亡き俳優、原田芳雄の家に集まったときに、「石橋を主演にした映画を作ろう」という話になったのがはじまりだという。(産経新聞)

 そんな話ですから、桃井かおり、佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、柄本明など錚々たるメンバーが脇を固めます。

石橋蓮司(市川、御前零児)
 そんなジャンルはありませんが、ハードボイルド・コメディです。78歳の石橋が演じるのは売れない小説家、市川。純文学から出発してハードボイルドに転向し、原稿を出版社にせっせと持ち込むもいずれもボツ。編集者は北方謙三の二番煎じ、三番煎じだと言い、ハードボイルドさえ時代遅れなのにもっと陳腐、物語が無いと酷評します。つまり、この映画は時代遅れのハードボイルドなんだと、制作者自身が言っていることになります。
 市川の小説は、伝説の殺し屋の仕業だと噂される未解決殺人事件をリアルに描写したものだそうです。市川は、友人から持ち込まれる殺しの依頼をヒットマンを使って実行する「伝説の殺し屋」。ヒットマンの情報を元に「ハードボイルド」を執筆するわけです。その市川のキャラクターはというと、教師をしていた妻(大楠道代)の年金で暮らし、ゴミを出し洗濯物を干す主夫。夜になるとコートとボルサノーリを纏いショットバーで殺しの相談する裏稼業、決めセリフは「夜は酒が連れてくる」従ってペンネームは御前零児w。
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岸部一徳(石田)
 市川に殺しを依頼する石田を演じるのが岸部一徳。女絡みで馘になったヤメ検で元暴力団の弁護士、資格剥奪されて今は警備会社の裏顧問、「表に出ないドブ浚い」と言われる(『団地』とは打って変わって)凄いキャラクターです。岸部一徳はコメディ・キャラですが、こういう悪役も似合います。
 石田が依頼したターゲットは、高配当を餌に巨額の金を集め倒産を繰り返す投資コンサルタント。餌食になって自殺した被害者や自己破産は数知れずという詐欺師。これでは、「必殺仕事人」の元締じゃないですか。

大楠道代(弥生)、桃井かおり(ひかる)
  弥生は、小学校だか中学校の教師をして売れない小説家・市川を支えてきた糟糠の妻 。自室に鍵をかけ、夜な夜な巷を徘徊する市川の素行に不審を抱き、長年連れ添った夫との関係に疑問を持ちます。市川の行動を追う中、ショットバーでひかると出会います。
 ひかるは、元ミュージカルのスターで市川と石田の50年来の友人。ひかるがウドンを湯がくシーンがあり、ウドン屋の主人なのかパートなのか?。夜な夜なバーに現れ、あの口調で石橋蓮司と岸部一徳に絡みます。バーでシェーカーを片手に”SummetTime”を歌う芸まで披露してくれます。
 ひかるは弥生に市川との馴れ初めを語ります。1960年代末、機動隊に追われて逃げ込んだ喫茶店で市川と石田に出会ったそうです。市川は二浪してやっと入った二流私大の学生、石田は司法試験しか頭にない国立大の学生。その成れの果てが、売れない小説家と資格を剥奪された元弁護士ということです。

 2020年に「団塊の世代」を映画にすれば、「一度も拳銃を撃たなかった」というハードボイルドとなります。徹頭徹尾ハードボイルドのカリカチュアであり、1969~1970年代の青春のカリカチュア、いやオマージュです。『一度も撃ってません』とは、なかなか切ないタイトルです。

監督:阪本順治
出演:石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり

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