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いせ ひでこ ルリユールおじさん(2011講談社) [日記 (2024)]

ルリユールおじさん 絵本です。NHK「ラジオ深夜便」で作者のインビューを聴き、「そういう世界もあるんだ」と図書館で借りてきました。そういう世界とは、絵本という世界と製本・装丁という世界です。

 作者は、パリで、ショーウィンドーに本が飾られた風景に感動し、その店が忘れられず再訪して本書が生まれたと言います。店とは製本の工房です。ルリユ−ルは名前かと思ったのですが、

Relieurは、主にフランスで製本・装幀を手作業で行う職人を指す言葉である。また、その工程自体もルリユールと呼ぶことがある。Wikipedia

だそうです。作者はその工房を訪れ製本・装幀の工程を見学し、その時の体験が『ルリユールおじさん』に結実します。
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 ソフィーのお気に入り植物図鑑の装丁が壊れます。そんなに気に入っているのならルリユールに修繕して貰えば、という露天商の本屋さんの助言で「ルリユールおじさん」の工房を尋ねます。ルリユールのおじさんは、ルリユールには「もう一度つなげる」という意味があると教え、傷んだ表紙にソフィーの大好きなアカシアの木をあしらい、金の文字で“ARBRES de SOPHIE(ソフィーの木たち)”と刻印し図鑑は蘇ります。それだけの話です。

旅の途上の独りの絵描きを強く惹きつけたのは、 「書物」 という文化を未来に向けてつなげようとする、 最後のアルチザン (手職人) の強烈な矜持と情熱だった。手仕事のひとつひとつをスケッチしたくて、 パリにアパートを借り、何度も路地裏の工房に通った。 そして、 気づかされる。
本は時代を超えてそのいのちが何度でもよみがえるものだと。(あとがき)

 青を基調に、パリの下町と工房の様子を描いた絵は、お気に入りの本を修繕して何度も読みたいソフィー、本を修繕して文化を残すルリユールの伝統と調和して郷愁を誘います。昨今、表裏をボール紙(カルトン)で装丁し書名を刻印したハードカバーは少なくなっています。愛書家ではありませんが、それでも一生持っていたい本はあります。
 コミックや絵本は読まないのですが、たまには絵本もいいですね。

タグ:読書
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