桜田門外ノ変〈上〉

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/03
  • メディア: 文庫

 桜田門外ノ変は、勅許を得ず諸外国と条約を結んだ大老井伊直弼の暗殺事件である。教科書的には、天皇をないがしろにし洋夷と結んだ井伊直弼を、尊王攘夷の思想を持つ水戸藩士が天誅を下したということだが、根はもっと深い。安政の大獄による水戸藩弾圧(水戸藩は尊王攘夷思想の卸し元)に対する反撃、特に水戸藩へ下された勅許の強引な返還問題(幕府の横槍)、水戸藩内部の保守派と急進派の暗闘などがある。弾圧により同志が減った急進派(尊王攘夷派)が、井伊直弼を消すことによって時代を回転させ自派の地位回復を図ろうとしたとも考えられる。