南太平洋で覇権を争った,零戦(上) と グラマンF4Fワイルドキャット(下)

 航空機事故を扱ったノンフィクションから出発した柳田邦男には、技術開発、システムを論じた企業戦略ものが多い。著者には零戦の開発ドキュメント「零式戦闘機」があり、本書はもっと広汎な、零戦に端を発した日米の戦闘機開発ドキュメントでり、戦争という組織と組織がぶつかる云わばビジネス競争のドキュメントでもある。戦争は当然国家間で行われるが、ひとつひとつの戦局や、勝敗を総括した(例えば戦力の増強方法など)戦略の立て方等は、経営そのものである(本書でも「戦争経営」という語句が登場する)。戦術、戦艦、航空機、情報機器、装備等のシステム(体系)とシステムの戦いであり、指揮官の優劣が勝敗を分けるることもビジネスそのものである。違うのは戦争は明確な敵の姿があるがビジネスには無い。