小川洋子の原作を仏の女流監督が映画化しものです。小川洋子には『博士の愛した数式』という有名な小説・映画がありますが、『薬指の標本』も様々なイメージの交差する幻想的な作品です。

 この映画の構図です。

・職場の事故で薬指を切断してしまったイリス(オルガ・キュリレンコ)が、仕事を探しに港町にやって来ます。
・港町で『標本製作工房(ラボ)』の受付事務員として職を見つけます。
・街のホテルに住み、部屋は港湾労働者の青年と相部屋。昼は青年、夜はイリスが使っています。
・『標本製作工房(ラボ)』とは、個人から依頼され標本を製作保管する工房。
・ラボの所長は謎の中年男性。
・標本として依頼されるのは、『家の焼け跡に生えたキノコ』『恋人からプレゼントされた音楽(楽譜)』『やけどの痕』『可愛がっていた文鳥の骨』などかなり変わっています。
・ラボの建物は75室ある元女子学生寮で、元女子学生の老女がふたり今なお住んでいます。

 こういう構図のなかでドラマとも言えないドラマが展開します。