ジャンルで言うと、アクションでもないしヒューマンでもない。当然ラブストーリーでもなく、やはりサスペンスなんだろうか、それも少し違う・・・と一筋縄ではいかない厄介な映画です。

 主人公エドワード・ノートンのナレーションで成り立っている映画で、たぶんこれがこの映画のミソです。大手自動車会社に勤め高給を得、イケアの家具や高級オーディオセットに囲まれて暮らす30歳の独身男が、不眠症を治すために出入りするのが、『睾丸癌患者の会』や『何とか感染症患者の会』『末期癌患者の会』みたいな、患者が自分の病状を公開し合ってお互いを慰め合う『会』。この会で、睾丸を取り去ったボブの胸で同情の涙を流し、主人公は数ヶ月ぶりの安眠を取り戻すことが出来たわけです。
 主人公はもちろん健常者です。高給を得、北欧家具や高級オーディオセットに囲まれて暮らしていようが、心には『睾丸癌患者』『何とか感染症患者』『末期癌の患者』同様の空洞があり、これらの『会』で同病相憐れむ癒しによってこの空洞が満たされるという構図です。『会』に参加することで生き甲斐を再発見するわけです。『睾丸癌患者の会』は別にして、このシチュエーションはよく分かります。