コーエン兄弟の映画『ファーゴ』のドラマ版リメイク?です。リメイクといっても、アメリカ中西部(ミネソタ、ノースダコタ、サウスダコタ)の冬景色、コメディのように人が殺され、お腹の大きい(妊婦)女性警官が捜査する、という枠組を除いてストーリーは別物。脚本がコーエン兄弟、ビリー・ボブ・ソーントン、マーティン・フリーマン主演です。


 





 
映画
ドラマ


人犯


ウィリアム・H・メーシー
スティーブ・ブシェミ、ピーター・ストーメア

保険セールスマン・レスター
殺し屋マルヴォ



被害者
警官
レスターの妻、警察官


警察
女性警官フランシス・マグドーマン
モーリ(ミネソタ州ベミジー署の副署長)


箴言家
 
殺し屋マルヴォ







だいたいこうなります。



 映画は、借金で首が回らない車のセールスマン、ウィリアム・H・メイシーが、妻を誘拐し義父の自動車販売会社社長から身代金を騙し取ろうとした事件を、妊婦の警察署長フランシス・マグドーマンが解決するというブラックコメディーのサスペンス。ウィリアム・H・メイシーのドジ振りと、誘拐を請け負ったスティーヴ・ブシェミ、ピーター・ストーメアの悪役振り、加えて死体をミンチにするシュールな対比が見どころでした。



 ドラマの方も大体同じ。ウダツの上がらな保険のセールスマン、レスターが、ふとした弾みで殺し屋に暗殺を依頼したことから始まります(実際は依頼はしなかったが)。このセールスマンをマーティン・フリーマンが演じます。『ホビット』のビルボ・バギンズが現代に甦ったイメージです。ビルボ・バギンズ、じゃなかったレスターは、あまりの悪口雑言に奥さんをハンマーで撲り殺してしまいます。死体処理に困ったレスターは殺し屋(ビリー・ボブ・ソーントン)に助けを求め、殺し屋は、レスターの家を偶然訪れた警官をライフルで殺し...と石が転がるように次々に殺人が起きます。マーティン・フリーマンのとぼけた味と、得たいの知れない殺し屋ビリー・ボブ・ソーントンの凄み、コメディと暴力の融合がコーエン兄弟の魅力です。



 一連の殺人事件を捜査するのが、ちょっと太めの女性副署長のモリー(アリソン・トルマン)。常軌を逸した登場人物の中で 、唯一マトモな存在。独身で登場しますが、後半結婚して映画と同じように大きなお腹を抱えながら事件を解決します。映画のフランシス・マグドーマンの分身です。凶悪犯罪の捜査と妊婦の警察官の意外性もまた、コメディと暴力の融合です。



 殺すことが自己目的化した得体の知れない殺人者。妻殺しの罪を弟に押し付け、ちゃっかり若い美人と再婚、今度は身代わりに新妻を暗殺者の手に委ねる保険セールスマン。殺人者の正体とセールスマンの末路、ふたりに絡む身重の女性警察官、この三つで”シーズン1”全10話を最後まで引っ張ってゆきます。



 レンタルショップに行くとアメリカのTVドラマがずらりと並んでいます。今、旬らしいです。どこかのサイトで読んだのですが、ハリウッドは今や中国市場に目が向いており、市場受けするFSXを駆使した映画に熱心で、従来からある脚本で見せる映画には興味を持っていないとのこと。方やTVはネット配信に押されて振るわず、ドラマ性の強い映画はネット配信に移行していると言うのです。一話完結型と連続ものがあり、視聴率の良いものはシーズン1、シーズン2と続くようです。1シーズンが一話45分で10~15話、長いものは25話。これが延々と続くわけですから途中からダレますが、巧みなストーリーテリングでついつい見るハメとなります。



というわけで、映画はお休みして当分はドラマです。


制作:ノア・ホーリー

出演:マーティン・フリーマン ビリー・ボブ・ソーントン アリソン・トルマン