ヒトラーの防具〈上〉

  • 作者: 帚木 蓬生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 文庫


 旧東ベルリンの大学の倉庫で剣道の防具が発見される。防具にはには「贈ヒットラー閣下」と記され、同時に20冊に近いノートも発見される。ノートから、防具渡独の経緯とそれを運んだ青年将校が見た、第二次世界大戦前夜のドイツと日本の物語が始まる。香田ミツヒコ陸軍中尉(後大尉)、ドイツ人を父に持つ駐ドイツ大使館付武官補佐官。物語は香田陸軍中尉の手記を中心に、1937年から1945年のベルリンを舞台に進行する。ナチスの独走に日本が巻き込まれることを防ごうと苦慮する駐独大使・東郷茂徳、ナチ崇拝者で日独伊三国同盟の実現を推進する武官(後独大使)・大島、果ては宣伝相ゲッペルス、総統ヒットラーまで登場する。創作の部分では、香田の兄でミュンヘンの精神科医・雅彦、香田が下宿する大家でベルリンフィルのオーボエ奏者・ルントシュテット夫妻、ユダヤ排斥の中でルントシュテットが匿い、後に香田が匿うこととなるユダヤ人娘・ヒルデなどプロットに必要な人物がもれなく配される。