何とも古風なタイトルですが、中身も古風です。『秋のソナタ』で手こずった難解なイングマール・ベルイマンですが、この映画は(一見)分かりやすいです。

 舞台はスェーデンなんでしょうね、時代は不明。中世ということもないと思いますが、信仰が生活を律している時代の話です。
 両親に甘やかされて何不自由なく暮らすカーリン。冒頭から朝寝坊して礼拝に遅刻します。母親から教会にロウソクを届けるように言われ、これは嫌だこれは嫌だ絹の服を着てゆくと大騒ぎ。カーリンと同行するのが使用人のインゲリ。インゲリはカーリンの引き立て役で、このふたりは対照的です。カーリンは育ちのよさをうかがわせる可愛いふっくらした容貌ですが、インゲリは鋭い目つきで野性的、そぎ落としたような容貌です。父親も分からない身重の体を粗末な服で包んでいます。

 インゲリとは途中で分かれカーリンはひとりで教会に向かいますが、羊飼いの兄弟と出会い、凌辱の末殺されます。サンドイッチからヒキガエルが跳びだし惨劇は一気にクライマックスへかけのぼりますが、このサンドイッチはインゲリが作ったものです。さらに、彼女はこの凌辱と殺人の目撃者であり、カーリンを助けなかったばかりかカーリンの不幸を期待したとさえ後に告白しています。こうなるとインゲリはカーリンの引き立て役などでは無く、主題なのかもしれません。