庭師は毎年奥さんを連れてニースへ2週間旅行します。毎年同じホテルの同じ部屋に泊まり、同じ海岸通りを散歩し同じベンチで憩うという話しと映像が挟み込まれます。こうした心が暖まったり暖まらなかったりするエピソードがこの映画を支える重要なパーツです。
映画を支えるもうひとつの重要なパーツが『死』です。冒頭で、『死に神の鎌』の如く草刈り鎌のエピソードが描かれ、ふたりの共通の知り合いの葬儀があり、釣りのシーンで鯉を死に神になぞらえます。避けて通れない『死』を、哀歓豊かに描いた辺りがこの映画の真骨頂でしょう。庭師は、彼の奥さんの肖像画と彼が好んだものを題材に画家に絵を依頼します。この絵の展覧会が盛況で成功するシーンで幕となります。当然、ナイフと紐の絵も出てきます。そのナイフと紐が会場で活躍するあたりは、絵になっています(笑。
ダニエル・オートゥイユは『あるいは裏切りという名の犬』で強面のパリ警視庁の刑事を演じていましたが、この映画では一転人の良さそうな画家です。庭師の奥さんを演じるヒアム・アッバスですが、何処かで見たことがあると思ったら『扉をたたく人』に出ていました。ジャン=ピエール・ダルッサンは今回初めだと思ったのですが『ロング・エンゲージメント』に出演していた様です。ジャン・ベッケルのお父さんが『モンパルナスの灯』のジャック・ベッケルだそうです。 画家と庭師
ちょっとした遊び ナイフと紐
監督:ジャン・ベッケル
出演:ダニエル・オートゥイユ ジャン=ピエール・ダルッサン ヒアム・アッバス