エニグマはナチスが用いた有名な暗号機の名称です。映画は、英国の暗号解読機関ブレッチリー・パーク(GC&CS)を舞台に、エニグマに使われる暗号解読の『鍵』を探し、大西洋で連合軍を脅かすUボートを封じ込める物語です。
 暗号解読班の数学者ジェリコ(ダグレイ・スコット)の恋人クレア(サフロン・バロウズ)が突然失踪します。この美貌の女性クレアの失踪の謎が映画の本当のストーリーです。クレアはジェリコの回想の中でしか登場しませんが間違いなくこの映画のヒロインで、ジェリコ、ウィグラム、ウォレスなどの登場人物はこのヒロインを際だたせる背景に過ぎないのかも知れません。

 神経を病んで入院していたジェリコがブレッチリー・パークに戻るところから映画はスタートします。ジェリコの思い出の中でクレアとの関係が次第に明らかになってきます。クレアはジェリコに近づき、ジェリコを翻弄するような関係を結び理由もなく去ります。この失恋がジェリコの神経症と関係があるようで、病気から復帰したジェリコを待っていたのは、クレアの失踪でした。