天使と罪の街(上) (講談社文庫)

  • 作者: コナリー M.
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/08/12
  • メディア: 文庫


 主人公はヒエロニムス・ボッシュ、30年勤めたロス市警を辞めた私立探偵。冒頭で初対面の人物とこんな会話を交わしています。

「ヒエロニムス・ボッシュ。あの頭のおかしな画家みたいだな、だろ?」・・・初対面の人物
「あの画家は頭がおかしかったという者もいるし、未来を正確に予見したのだという者もいる。」・・・ボッシュ

 画家とは『快楽の園』を描いた15世紀オランダの画家ヒエロニムス・ボッシュのことです。ハードボイルドを読む楽しみは、こうした会話に出会う楽しみでもあります。それと、主人公がさりげなく呟く箴言。〈追い波〉という船名の由来についてこう云います、

「〈追い波〉とは、注意して見ていなければならない波のことだ、とテリーは言った。盲点から近づいてきて、背後から襲ってくるのだという。なかなかいい処世訓だ。」