『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』に続く三部作の最終巻です。ゼロ戦をベルリンに運ぶ『ベルリン飛行指令』、真珠湾奇襲作戦にまつわる日米諜報戦を描いた『エトロフ発緊急電』、終戦工作を描く本書と、三部作は主人公を異にした独立の物語ですが、海軍省書記官・山脇順三、その妻真理子、零戦をベルリンに運んだ真理子の兄安藤大尉、エトロフに米諜報員を追った磯田憲兵隊軍曹、秋庭憲兵少佐などが登場してこの三部作をつないでいます。

 物語は大きくふたつに分かれます。ひとつが、書記官・山脇の目を通して描かれる海軍省の終戦工作。もうひとつが、ストックホルム駐在武官・大和田による諜報活動です。
 連合国との和平を探る海軍和平派終戦工作に、中立国スエーデンから発信されるソ連対日参戦や米・原爆製造の情報が絡み、さらに本土決戦を主張する陸軍主戦派が暗躍し、物語は緊張感をはらんで進行します。