『中原の虹』 (1)では、『蒼穹の昴』の主人公・春雲(春児)の兄・春雷を狂言回しに、張作霖や張景恵、馬占山が馬賊として東三省で力を伸ばす物語でした。(2)では、西太后、袁世凱が登場し、戊戌の変法後の紫禁城の魑魅魍魎が描かれます。光緒帝も登場しますから、この皇帝暗殺の謎を作者なりに解決してくれるんだろうと期待します。

 何と、龍玉(ドラゴンボール)登場です。(1)で張作霖と春雷が乾隆帝の陵墓で見つけ、小説では長学良の玩具となっています。この龍玉を持つ人間が中原の覇者となるという伝説のドラゴンボール。光緒帝が袁世凱にこの秘密を明かし、あんたドラゴンボールを探して皇帝となってこの国を救え!と言うんですが、サービス精神旺盛な浅田次郎も、ここまでやります?
 ドラゴンボールはともかく、春雷、春雲の妹・玲玲と同郷の梁文秀も再登場し、『蒼穹の昴』の読者は拍手喝采でしょう。戊戌の変法で敗れた梁文秀は玲玲と日本に亡命しているんです。このふたりを東京で見守るのが、馬賊の襲撃に巻き込まれて張作霖、春雷と関係を持つ奉天清軍の軍事顧問・吉永将陸軍少尉の母。これは春雷、春雲、玲玲再会の伏線ですねぇ。