きっかけは、嵐山光三郎の『文人悪食』です。漱石から三島まで37人の文士を、「食」を切り口に縦横無尽に切りまくった快著です。太宰、安居、檀一雄は出てくるのですが、同じ無頼派に属するオダサクが出てきません。食い倒れの街大阪の生んだ織田作之助、この人を書かないのは片手落ちではなかろうかと思うのですが(続編の『文人暴食』には?)。
 とりあえず代表作の『夫婦善哉』。青空文庫で読めるのがいいです。

 取り立ててストーリーがあるわけではありません。元芸者の蝶子と梅田新道の化粧品問屋の息子・柳吉の「夫婦」振りを描いた風俗小説です。夫婦と言っても正式な夫婦ではなく、曽根崎新地で芸者に出ていた蝶子の元に、道楽息子の柳吉が通い詰め、ふたりでゲテモノを食べ歩いている間に一緒に暮らすようになったという「夫婦」。