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映画 赤ひげ(1965日) [日記(2014)]

赤ひげ [東宝DVDシネマファンクラブ]
 江戸、小石川療養所を舞台に、長崎遊学から帰った医師・保本登(加山雄三)のビルトゥングスロマンです。保本は、遊学から帰れば御殿医に推挙される筈だったのですが、小石川療養所という江戸市民病院の様なところに配属されます。当てが外れた保本は、こんな所に居られるか!と療養所のルールを無視し診療もせず、療養所からクビを言い渡されるのを待っています。
 診療所の院長は、新出去定こと赤ひげ(三船敏郎)。大名旗本から高額な治療費を取って療養所の運営に当て、貧しい庶民は無料で診療するという人物です。保本は、赤ひげに反発を覚えながら、赤ひげの「医は仁術」に次第に感化され医師として成長してゆくとという、如何にも山本周五郎、黒澤好みの人情ものです。

 三船敏郎と加山雄三も悪くはないですが、人情噺に登場する俳優の演技が素晴らしいです。その人情噺から三編ほど。

【六助】
 入院患者の六助(藤原釜足)が亡くなります。六助は、入院してから一言も口を利いたことが無いという患者。赤ひげは、六助が背負った過去の重さを感じています。赤ひげは、六助の臨終をこれも経験だと保本に看取らせますが、保本は死にゆく六助の苦しみを正視できない有様。藤原釜足さんはこの臨終の演技だけですが、さすが鎌足さんです。
 六助が亡くなって、三人の子供を連れた娘(根岸明美)が現れます。娘の口から、六助が背負ったものが明らかにされ、娘は六助の臨終の様子を尋ね、赤ひげは安らかなしであったことを告げます。この根岸明美の、身をよじるような問わず語りの演技が見どころです。根岸明美さんは、『どん底』の夜鷹も素晴らしかった。

【佐八】
 医師から禁じられているにもかかわらず、佐八(山崎努)はアルバイトをして得た金で入院患者に施すという仏のような人物。病状が悪化し、元いた長屋で死にたいという佐八の望みを叶えるため、赤ひげは保本を付けて長屋に返します。
 豪雨で長屋裏の崖が崩れ、一体の骸骨が出土します。佐八は長屋の住人を呼んで、骸骨のいわれを語り出します。これも、如何にも山本周五郎という人情噺です。『柳橋物語』に似ていなくもないですが、勿体無いので書きません(笑。

【おとよ】
 おとよ(二木てるみ)は、母親が娼家の軒先で死んだため娼家の女将(杉村春子)に拾われ、12歳で病身にもかかわらず春を売らされそうになる薄幸の少女。その寸前に赤ひげに救われます。 おとよを療養所に引き取った赤ひげは、最初の患者としておとよを保本に預けます。頑なに心を閉ざすおとよと、何とか心を開かせようとする保本の心の触れ合いが描かれます。二木てるみの演技に吊られて思わずホロリとなります。
 このシークエンスには、赤ひげが娼家の用心棒を相手に大立ち回りを演じ、子ネズミ(頭師佳孝)と呼ばれるカッパライの子供が登場したりで、これだけで映画が一本出来そうなくらいエピソードが詰まっています。

 黒澤映画ですから、志村喬、藤原釜足、土屋嘉男、渡辺篤、左卜全、東野英治郎、三井弘次などお馴染みの俳優が出演し、こちらも楽しめます。3時間を超える長編ですが、少しも飽きさせません。黒澤明には、山本周五郎を原作とした『椿三十郎』『どですかでん』『雨あがる(脚本)』『どら平太(脚本)』があります。相性がいいようです。

監督:黒澤明
原作:山本周五郎
出演:三船敏郎 加山雄三 根岸明美 山崎努 二木てるみ

当blogの黒澤明
羅生門(1950)
生きる(1952)
七人の侍(1954)
どん底(1957)
蜘蛛巣城(1957)
用心棒(1961)
椿三十郎(1962)
赤ひげ(1965)・・・このページ
影武者(1980)
雨あがる(2000)・・・脚本
どら平太(2000)・・・脚本

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