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藤原伊織 テロリストのパラソル [日記(2012)]

テロリストのパラソル (講談社文庫)
 1970年代を引きずったミステリです。全共闘崩れの主人公が、20年後に起こった爆弾テロによって過去に引き戻され、現在と過去が交差する物語です。乱歩賞と直木賞のダブル受賞だそうで、空前絶後の快挙とか。確かに読ませます。
 団塊の世代の作家が、その分身の団塊の世代の主人公を描き、読む方も団塊の世代と三拍子揃ってますから、何をか言わんやですね。

 場末のバーのバーテンダー島村は、新宿の公園で爆弾テロに遭遇します。島村には全共闘に加わっていた頃爆弾で人を殺傷してしまい、以後20年間変名で世間の裏で暮らしてきたという過去を持っています。この爆弾テロの犠牲者の中に、20年前に行動を共にした全共闘時代の友人が含まれていたというところから物語が動き出します。ひとりは島村が身を隠す原因となった爆弾の製造者桑野。もうひとりは、桑野との共通の友人で3ヶ月同棲した優子。
 学生時代に濃密な関係を築いた三人が、20年を経て偶然に爆弾テロの現場に居合わせ、ふたりは死にひとりは生き残るという、なかなか凝った幕開けです。この島村にヤクザの浅井がからみ、亡くなった恋人優子の遺児・塔子が現れ、島村は爆弾テロの真相を求めて行動を起こします。それは、恋人、友人の弔いであるとともに、彼らの隠された20年をひもとく行動でもあったわけです。

殺(あや)むるときもかくすならむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ

 ということで、団塊の世代が過去の自分を懐かしみながら読むミステリであり、それぞれが無為に過ごした20年、30年を島村という主人公に託して再生できるかもしれないと錯覚する物語でもあります。
 世のオジサンたちにとってはなかなか良くできたミステリなのですが、昨今の世代には通じませんねぇ。

タグ:読書
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