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映画 ナイブズ・アウト(2019米) [日記 (2024)]

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 [DVD]
 名探偵が殺人事件の謎を解くと云うフーダニット(Who done it )の古典的な映画です。探偵がダニエル・クレイグで被害者がクリストファー・プラマーという『ドラゴン・タトゥーの女』のコンビ。
 ミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が誕生パーティの翌朝に頸動脈を切られた遺体で発見されます。ハーランのミステリーは30ヶ国語で8000万部売れたという大作家。警察は自殺と判定しますが、有名な探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)の登場で捜査は振り出しに戻る、というところから映画はスタートします。匿名の人物からブランの元にハーランの死亡(自殺)記事と現金が送られ、ブランは捜査を始めたのです(これが伏線)。

 殺人事件として捜査すると、ハーランの家族は怪しさ満点。長女の夫はハーランに浮気を知られ娘に知らせると脅され、ハーランの小説を出版する出版社社長の次男は、映画化をハーランに反対され社長の座があやうくなっています。ハーランの亡き長男の妻は、娘の学費をハーランから二重に詐取、それがバレて援助を打ち切ると宣告され、ハーランの孫は素行が悪いため誕生パーティでハーランから遺産相続権剥奪を言い渡されます。ハーランの死はこの4人にとっては都合がいいわけです。殺人事件ならこの4人の誰かが犯人?、実はこれがミスリード。

 探偵ブランは、ハーラン付きの看護師で彼の日常を知るマルタを助手に事件に挑みます。マルタは、嘘をつくと必ず吐いてしまうという奇癖の持ち主で、このドラマの信用できる語り手です。
 マルタによって真実が語られます。マルタは何時も通り鎮痛剤を100mg、モルヒネを3mgをハーランに注射しますが、誤って鎮痛剤3mgとモルヒネ100mgを注射してしまいます。ハーランは、モルヒネによる錯乱状態のなか救急車を拒否し頸動脈切って自殺したというのです。一見、多額の遺産をめぐる殺人事件という装いで始まりますが、ブランによって事件に隠されたもうひとつの顔が浮かび上がります。ブランに捜査を依頼した匿名の人物とは誰か?、誰が遺産を相続するのか?、ハーランは自殺なのか他殺なのか?。

 弁護士によってハーランの遺言が公開され、何と!全財産は看護師のマルタに贈られます。ハーランは家族に愛想を尽かし、誠実で勤勉な看護師に全財産を贈ったわけです。この事実を事前に知った家族のひとりが、事件の新聞切り抜きと現金を匿名でブランに送り、ハーランの自殺を殺人に誘導してマルタの相続権を奪おうとしたわけです。
 家族の裏切りに愛想を尽かすハーラン、誠実な看護師、赤の他人の看護師に遺産を取られるハーランの家族、の3題噺です。結局ハーランの死は自殺で、「名探偵」ブランは遺産相続でモメるハーラン家のゴタゴタを整理した弁護士の様なものです。この映画はフーダニット(Who done it )ではなく、「名探偵と刃の館の秘密」なる副題は少々言い過ぎでしょう。
 Wikipediaによると「批評家支持率は97%、平均点は10点満点で8.34点」だそうです。ミステリーは、事件の謎解きだけではなく動機や背景とセットになって魅力的になると思うのです。そうしたものがスッポリ抜け落ちて遺産相続という即物的なものでが動機では、面白さ半減。名探偵の鮮やかな謎解きがあったにしてもです。昨年観た『ザリガニの鳴くところ』の方がはるかに面白いです。ところがこの映画の評価は、Wikipediaによると「支持率は34%、平均点は10点満点で5.2点」だそうですw。
 
 第2作『ナイブズ・アウト/グラス・オニオン』もあるようですが、ダニエル・クレイグ演じるブノワ・ブランは、ホームズやポアロのような名探偵と成れそうにもない、というのが第一作を観た感想。ダニエル・クレイグは007や『ドラゴン・タトゥーの女』のイメージが強すぎて、新しいキャラに脱皮するのは大変だと思います。

監督:ライアン・ジョンソン
出演: ダニエル・クレイグ、アナ・デ・アルマス、クリス・エヴァンス、クリストファー・プラマー

タグ:映画
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