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NHKドラマ 『舟を編む 〜私、辞書つくります』(2) [日記 (2024)]

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紙とデジタル
 続きです。ドラマ『舟を編む』も第7話まで来て『大渡海』の出版は風前の灯火となります。出版不況で、紙での出版は止めてデジタル一本にしろという司令が下ります。デジタルであれば文字の拡大も自由であり改訂も容易だというわけです。
 紙の辞書前提の辞書編集部は『大渡海』専用の紙の手当までしているわけですから大慌て。紙の辞書のメリット探しが始まります。行き着いたのが「セレンディピティ」。デジタル辞書は目的の語句を一発で表示できますが、紙の辞書は語句の前後で思いがけない発見(セレンディピティ)があるというのです。また、紙の辞書はパラパラめくっているいるだけで興味深い語句に出会え、「読む」辞書の側面も加わります。『新解さんの謎』には辞書を読む面白さが記されています。これはよく分かります。書店の減少が云々されています。本を買いに行き、書棚を眺めるうちに目的の本以外を買ってしまった、その本が面白かったということはよくありました。
 で、どちらに軍配が上がるのか?。みどりは紙の辞書とデジタル辞書をセットで販売する戦略に出て、『大渡海』デジタル化の危機を乗り切ります。

 辞書の出版をデジタルに一本化すると云う方針はもっともな話で、これには一理あります。昨今は本もデジタルで読む時代で、紙の辞書を開くことは殆どありません。テキスト派ですから辞書はよくと使いますが、紙の辞書ではなくスマホに仕込んだ「広辞苑」「新解さん(新明解国語辞典)」と、趣味で「万葉集」入れてます。デジタル辞書は、何時でも何処でも使えて複数の辞書を持って歩けるメリットは紙の辞書を大きく上回り、串刺し検索という離れ技も出来ます。「あたらよ(可惜夜)」を入力すると(iPhoneで変換できる!)広辞苑と万葉集の両方でヒットします。広辞苑がポケットに入っているんですから愉快です。以上余談です。

コロナウィルス
 コロナウィルスもしっかり取り入れられています。ひとつはパンデミックで現れた新しい語彙をどの程度『大渡海』に採り入れるかという問題。言葉の寿命と辞書の鮮度に関わる問題です。校了の迫っている編集段階で語彙を増やすことは全体に影響を及ぼすわけです。限られたページ数に何を入れるか何を省くかは、なるほど重要な問題です。ちなみに「パンデミック」という語彙は、「新明解第五版」「広辞苑第四版」には載っていませんw。

 もうひとつが、言葉の持つ力です。香具矢の店は休業を余儀なくされ、彼女は調理人の腕を維持するために京都に向かいます。この時、京都の香具矢と東京の馬締を繋ぐのが「言葉」だというのです。緊急事態宣言で外出が制限され分断された世界で、今こそ「言葉」こそが人と人を繋ぐというわけです。

 『大渡海』は無事発刊され、ドラマ『船を編む』は終わります。NHKらしいと言えばらしいですが、なかなか面白かったです。

原作:三浦しをん
出演:池田エライザ 野田洋次郎

タグ:映画
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