10年近く前に子供がビデオを借りてきて、「お父さん、コレ凄い」ということで家族で見ました。本当にすごかったです。DVDの環境が整った際にコレクション用に買いました。
再鑑賞。冒頭の30分、ノルマンディー上陸作戦のオマハ・ビーチは何度見ても「凄い」です。DVDの音声をオーディオに入れて聴くと迫力満点です(我が家は未だ2チャンネルです)。
4人兄弟の兄3人が戦死したため、フランス戦線にパラシュート降下した末息子・ライアンを探し出し、4人の母親の元に届けるという物語です。ライアンの捜索をするのが、トム・ハンクス演じるミラー大尉と7人の海兵隊員、ライアンを演じるのが今をときめくマット・デイモンです。
素直に感動したのは、戦死した兵士の母親を慰めるリンカーン大統領の手紙の朗読をバックに、国防省がライアン救出を決定する場面です。Wikipediaによると『ソウル・サバイバー・ポリシー』というものがあるそうで、このルールに沿った措置なのでしょうが、このポリシーひとつ取っても、『滅私奉公』『お国のため』がまかり通っていた当時日本はアメリカに遙かに及ばなかったわけです。1人を救出するために8人を適地の奥深くに侵入させるというポリシーは皮肉を通り越して、文字通りアメリカの『ポリシー』を感じさせます。
オマハ・ビーチのリアリズムもさることながら、ミラー大尉の「手の震え」、投降したドイツ兵の無差別殺人、戦闘地域の住民の脅えなど、極限状態にある人間の心理を巧みに捉えた描写が随所に見られ物語を膨らませています。転戦する度にその地の土を缶に入れ背嚢に詰める兵士の逸話も秀逸です。通訳のアパム伍長はこの映画のkeyかも知れませんね。レーダーサイトで捕虜にしたドイツ兵(殺すか殺さないかでモメて結局解放)が物語最期の戦闘で皮肉にもユダヤ人のメリッシュ2等兵?を刺し殺し、後にアパム伍長に射殺されるというエピソードもそれを物語っています。最期にミラー大尉の「手の震え」は止まるのですが、ミラー大尉の生も止まるというラストシーンは暗示的です。この映画は、アーリントン国立墓地に詣でるライアンに始まり、同じアーリントン墓地のライアンで終わる構成ですが、アメリカに帰還したアパム伍長で終わる選択もあったのではないかと思います。きっと高校の『国語教師』をしていることでしょう。
スピルバーグには『未知との遭遇』や『ET』のFS、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』『ジュラシック・パーク』の冒険ファンタジー、『激突!』『ジョーズ』『シンドラーのリスト』の実録ものというかシリアスな映画が3系統があるのですね。
監督:スティーヴン・スピルバーグ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ミラー大尉(トム・ハンクス)
ホーヴァス軍曹:トム・サイズモア
ライベン一等兵:エドワード・バーンズ
ジャクソン一等兵:バリー・ペッパー
メリッシュ一等兵:アダム・ゴールドバーグ
カパーゾ一等兵:ヴィン・ディーゼル
ウエイド衛生兵:ジョバンニ・リビシ
アパム伍長:ジェレミー・デイビス
ライアン二等兵:マット・デイモン