『
エリザベス』では、メアリー1世の死後女王となり、権謀渦巻く宮廷で国家と結婚したエイザベスを描いていましたが、その続編です。スコットランド女王メアリーの謀反、スペイン無敵艦隊との海戦の勝利にウォルター・ローリーとの恋をからめて、エリザベス朝が花開くまでを描いています。アカデミー賞衣装デザイン賞を取っていますから、ケイト・ブランシェット達が着る衣装は豪華絢爛、16世紀の宮廷にいる気分にさせてくれます。
『エリザベス』でもスコットランド女王メアリーが登場していますが、『ゴールデン・エイジ』ではもう少し重要な役割を振られています。スペインのフェリペ2世と内通し、エリザベスの暗殺事件まで引き起こします。イングランドの女王になろうというわけです。メアリーはスコットランド女王ですが、ヘンリー8世の姉の孫に当たるわけですから、イングランドの王位継承権があります。後にメアリーとヘンリー・スチュアートの子であるジェームズ1世は、イングランド王・スコットランド王となっていますから、メアリーがイングランドの女王を望んでも不思議はないわけです。再婚について横やりを入れてきたエリザベスに反感を持っているという背景もあります。ここでも、エリザベスは『妾腹の女』と何度も言われています。結局エリザベス暗殺は失敗し、陰謀がばれて死刑となります。この死刑がスペイン・イングランド戦争(レパントの海戦)へと発展し、これも映画の重要なプロットです。スペイン=フェリペ2世=メアリー=カトリック、イングランド=エリザベス=プロテスタントという構図です(そればかりが戦争の原因ではありませんが)。
フランス王妃からスコットランド女王となり最後は死刑となるメアリー・スチュアートの方が、エリザベスよりよっぽど波乱に富んだ人生で、映画になってもよさそうですねぇ。『ブーリン家の姉妹』で使った関係図に追加してみました。
『エリザベス』で、エリザベスが女王となった時に、国庫は空、軍隊も貧弱という会話がありました。イングランドという国は、『
ジャンヌダルク』が登場する百年戦争でフランスから撤退し、その後イングランドの内紛である薔薇戦争(ランカスターVS.ヨーク)で疲弊していたようです。『ゴールデン・エイジ』でもこの窮乏を引きずっています。映画の冒頭でもナレーションが入りますが、当時のヨーロッパの雄は無敵艦隊と世界各地に植民地を持つ『太陽の沈まぬ帝国』スペインです。貧乏国家イングランドが何をやっていたかと言うと、(言い過ぎですが)フランシス・ドレークなどの海賊のピンハネなんですねぇ。略奪の対象は世界の富を一手に握るスペイン。
で登場するのがこれも海賊のウォルター・ローリーです。映画でもローリーはスペイン大使に泥棒呼ばわりされています。疲弊した国家の運営と、謀反、権謀の宮廷の中で虚栄を張らねばならない孤独なエリザベスの心を捉えるのが海賊ローリーです。ローリーは北アメリカの植民地(ヴァージニア)を献上したりしてエリザベスの気を弾きつつ、最後は女王をふって若い侍女ベス(これもエリザベス)を取るんですから、なかなかやります。この女王の実らぬ恋が映画の主題でしょうね。レパントの海戦シーンもありますが、何かなおざり。
『エリザベス』『ゴールデン・エイジ』を観ると、エリザベスという存在を決定づけているのは
カトリックvs.プロテスタントと
アン・ブーリンで、この二つ後には
ヘンリー8世がいるわけです。史実は映画以上に面白いですね。
映画として面白いかというと、何ともいえません。NHKの大河ドラマ総集編です。もう少し主題を絞らないと。
【余談】
メアリー・ステュアートが斬首刑となるシーンがありますが、斧で首を切り落とすのですね。当時のヨーロッパではこれが普通に行われていたようで、ルイ16世の首を刎ねたギロチンが登場するのは18世紀になってからです。webをみると、スパッと切れず失敗も結構多かったようで、斬首刑が頻発したフランス革命後の恐怖政治時代に『人道的』処刑器具としてギロチンが発明されたということです。これだと確かに失敗はありません。小道具として、これも有名な拷問器具『鉄の処女』も登場しています。
エリザベス朝といえば『
恋に落ちたシェークスピア』を観ていました。エリザベス女王がお忍びでシェイクスピアを観に来るシーンがありましたが、エリザベスは芝居好きで公営の劇場を建てたりしています。
監督:シェカール・カプール
出演:
ケイト・ブランシェット
ジェフリー・ラッシュ
クライヴ・オーウェン
サマンサ・モートン
アビー・コーニッシュ