『怒りの葡萄』は、1929年に始まる世界恐慌とそれに続く干ばつによって土地を追われた、トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)一家の放浪の物語です。ストーリーは、オクラホマを後にカリフォルニアを目指すロード・ムービーの前半とカリフォルニアでの季節労働者の生態を描く後半の二部構成になっています。

 冒頭で、トラクターが農民の家を破壊するシーンがありますが、これも資本と機械化という搾取被搾取を象徴しているのでしょう。不景気と自然災害で、小作農のジョード一家はオクラホマを去ることになります。ボロ車に家財道具一式を積み込み、各地でキャンプをしながらルート66を西に向かう難民となります。途中で祖父母が死に路傍に埋められます。元説教師ケーシーの弔いの言葉は彼らのおかれた運命を象徴しています。

生ける者は皆 聖なり
死んだもののために 祈ろうとは思わない
導きが必要なのは 生きている人間だ