シャルロッテは最近伴侶(恋人)を無くし孤独を慰めるためもあって娘の誘いに応じた様です。次いでエーヴァの妹エレナの存在が明らかになります。脳性麻痺の為施設に預けられていたのをエーヴァが引き取った様です。
ふと目覚めた夜更け、母娘の思い出話しが始まります。思い出は次第に熱を帯び、娘の母親批判へと発展してゆきます。ピアニストの母は幼い娘の養育を放棄し、娘と夫を捨て若い恋人に走った過去が明らかにされ、障害を持つ娘は施設へ追いやり、18歳のエヴァに妊娠中絶を迫り、エヴァの幼い息子が溺死したときも葬儀に参列さえしなかった身勝手さが糾弾されます。シャルロッテもまた母の愛を知らずに育った不幸、才能をすり減らすようなピアニストとしての過酷な現実を言い立てて対抗します。
母親は1泊しただけで逃げるように演奏旅行に出かけ、娘は母を理解したのかどうか、和解の手紙を書きます。
ここにあるのは、子は親を選べず親もまた子を選べず、しかも親子の絆を断ちがたい不幸でしょう。母と娘の『業』と言ってもいいでしょう。これが、父と息子であれば少し違ってきそうです。この男の視点がエヴァの夫である神父かもしれません。彼は妻とともに障害を持つ妹の世話をし、妻と母親の関係も理解している様で、さらに深夜の諍いで妻の過去(妊娠と中絶)も知ります。すべてを知ってなお
この母娘の深夜の諍いです。シャルロッテは、謎の『手』によって目覚めこの諍いに発展してゆきます。この『手』が彼女の妄想であるなら、娘との諍いそのものも夢の出来事であり、エヴァの糾弾はシャルロッテの懺悔とも読めます。
と言うことは、この非現実的な『手』≒次女の『甦り』(叫びとささやき)となってベイルマン世界を形作っていることになります。
『秋のソナタ』と言うタイトルですが、たぶんエヴァとシャルロッテをふたつの旋律とする『ソナタ』なのでしょう。秋とは人生の秋なんでしょうか?
監督・脚本:イングマール・ベルイマン
出演:イングリッド・バーグマン リヴ・ウルマン