こういう映画は、本当のところは日本人には分からないと思います。アカデミー賞作品賞に惹かれて見ましたが、ピンときません。黒人、白人、ヒスパニック、中東、中国系と様々な人種の様々な階層が入れ替わり立ち代り現れ、怒ったり泣いたり嘆いたり...冒頭のシーンがラストシーンに回帰し、そういう(多民族国家、人種の坩堝の)アメリカを描きたかったんだろう、アメリカの一断面を切り取りたかったのだろう、ということは分かるんですがそれ以上は理解できません。

 同じテーマを扱った「扉をたたく人」は、9.11以降に臆病となった米国が、人種的偏見を克服して本来の米国を取り戻してゆく物語で、ヒューマニズムを正面に据えたので分かり易い映画でした。一方、「クラッシュ」の様にいくつかのエピソードを重ね、判断はあなたですよ、と観客を突き放す映画は始末が悪いです。