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BSシネマ 素晴らしき哉人生(1946米) [日記(2012)]

素晴らしき哉、人生! [DVD]
 先日『ステキな金縛り』というコメディーを見ていたところ、あの世の管理局公安という変な役柄で小日向文世が登場し、フランク・キャプラがどうの『スミス都へ行く』『素晴らしき哉人生!』がどうのと映画の薀蓄を語っていました。ちょうどBSで『素晴らしき哉人生!』をやっていたので早速見てみました。

 『クリスマス・キャロル』ですね。ディケンズの小説では(映画でも)、強欲な金貸しの主人公がクリスマス・イヴに不思議な体験をして改心するというお話です。『素晴らしき哉人生』の主人公ジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)は別に冷酷な守銭奴ではなくむしろその反対の人間です。人生に躓いて、クリスマス・イヴに不思議な体験をして希望を取り戻すという話しです。『クリスマス・キャロル』ですから、偏屈で鼻の曲がった高利貸の敵役が必要ですが、ちゃんと用意してあります。

 ジョージ・ベイリーのクリスマス・イヴ、この一夜のエピソードのためにジョージの少年時代からの半生が描かれます。ジョージの父親は「貯蓄貸付組合」を経営しています。ここがポイントです。「貯蓄貸付組合」は組合員から預金を集めてそれを運用し、組合員に住宅資金を低利で貸し付けるという、さしずめ「住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)」の民間版です。
 wikipediaを見ると、

1900年代初頭のアメリカでは住宅金融の主な担い手は銀行では無くノンバンクが主流であり、その内訳は保険会社、土地・建築関係業者や個人的な貸借など様々であった。
貯蓄貸付組合は連邦準備制度において、かなり優先的な扱いをされており、通常の商業銀行に比べ、預金の利息が高く付けることができるようになっていた。これは、高い貯蓄利子によって、貯蓄貸付組合に預金を集め、住宅市場の流動性を高め住宅ローンの貸し出しを行わせ借り手が常に借りれるようにすると言う物であった。

というものですが、これを知っていると映画の背景とシーンがよく理解できます。

 ジョージは、父親が「貯蓄貸付組合」の理事長みたいなものですから裕福なんだろうと言うとさにあらず、慈善事業のように組合を経営しているために息子の大学進学資金にも事欠く有様。ジョージは、高校卒業の後父親の組合に勤めて資金を貯め進学を目指します。さてこれから進学だという矢先に父親が亡くなり、この「貯蓄貸付組合」を継ぐハメとなります。
 ここで悪役が登場します。銀行家で不動産業を営むヘンリー・ポッター(ライオネル・バリモア)、ハリー・ポッターではありません(笑。ジョージの「貯蓄貸付組合」が低利の融資をして住宅建設を促進しますから、賃貸をメインにするポッターの不動産業は圧迫を受けることになります。おまけに政府の優遇措置で銀行より金利が高いわけですから、ポッターにとって組合は眼の上のタンコブ。何かにつけ組合の経営に横車を押します。
 たぶん1929年の大恐慌の年だと思われます。幼な馴染みのメアリー(ドナ・リード)と結婚し、これから新婚旅行に行こうかという日に取り付け騒ぎが発生します。新婚旅行の資金2000ドルで払い戻しに応じて難を切り抜けるという始末。

 と云うようなエピソード交えて物語は山場へ向かいます。クリスマスイヴの日、政府の役人が組合の検査に現れます。金融庁か財務局の「立ち入り」みたいなものですねぇ(笑。その最中に、銀行に預ける予定の組合の資金8000ドルを紛失すると云う事故が発生します。従業員が、立ち話の途中で8000ドルを新聞と一緒にポッターに渡してしまうというミステイクを犯します。ポッターにとっては憎き組合の不祥事ですから、これ幸いと頬かむり。8000ドルが無いと組合は解散、ジョージは刑務所送りとなる絶体絶命のピンチ。

 いよいよ『クリスマス・キャロル』の定番、超常現象です。冒頭に声だけで登場した「翼を貰えない」二級天使の登場です。ジョージの危急を救うべく、天からこの二級天使が派遣されます。二級天使は、ジョージの危機を救うことが出来れば念願の翼がもらえるというわけです。
 二級天使はどうやってジョージを救うのか?ジョージの不思議な体験とは?二級天使は果たして翼を貰えたのか?

 『クリスマス・キャロル』は、金貸しの主人公がクリスマス・イヴに不思議な体験をして改心するというお話です。元々イイ人のジョージに超常現象が起きても改心にはつながらないわけです。改心すべきは8000ドルをネコババしたポッターです、というツッコミをいれても仕方がありませんね(笑。

 古き良きアメリカが一杯詰まっています。アメリカではXmasの定番映画らしく、NHKも気を利かせて12/20に放映したんでしょう。何年か前のXmasに「NOELノエル」が放映されましたが、これはよかった。「ラブ・アクチュアリー」もクリスマスにはぴったり。天使モノ(そんなジャンルはないですが)ではデンゼル・ワシントンとホイットニー・ヒューストンの『天使贈り物』というのがあります。
 
 でお薦めかと言うと、古色蒼然の感もありますが、見ておいて損はありません。 何かの折に、フランク・キャプラはね、と言うことができます(笑。

監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・ステュアート ドナ・リード ライオネル・バリモア

タグ:BSシネマ
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k_iga

どうぞ良いお年をお迎え下さいませ。
by k_iga (2012-12-31 18:11) 

べっちゃん

ありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
出かけています、帰ったらまた更新します。
by べっちゃん (2012-12-31 20:04) 

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