原題は"WEEK-END A ZUYDCOOTE"。英仏軍合わせて34万人がフランス・ダンケルクからドーバー海峡を渡ってイギリスに撤退した「ダンケルクの撤退」を舞台にしています。派手な戦闘を期待すると、当てが外れます。砲弾が炸裂し戦闘機の機関銃が火を噴きますから、まぁそれなりの戦争映画ではありますが、どちらかと云うと撤退するためにダンケルクに集結した兵士たちの人間ドラマです。

 フランスは1940年6月にパリを占領されナチス・ドイツに降伏しています。この映画の舞台となったダンケルク撤退の5月には、フランス軍はほぼ壊滅状態だったのでしょう。ダンケルクで、部隊で行動するイギリス軍は未だ軍隊として統率が取れているようですが、フランス軍はどうも軍隊の形をとどめていないようです。敗走兵がイギリスに逃れるためにダンケルクに集まってきた、そういう状態です。この映画の主人公ジュリアン(ジャン=ポール・ベルモンド)が原隊からはぐれてうろちょろしたり、アレクサンドル(フランソワ・ペリエ)が赤十字のマークの入った車をねぐらにワインを飲んで暢気な生活を送っているのは、そういう背景があってのことです。