『罪と罰』は大昔の高校生の頃読んで、主人公ラスコーリニコフが屁理屈を付けて強盗殺人をするという以外よく分かりませんでした。その後『カラマーゾフの兄弟』に挑戦したのですがあえなく敗退。『カラマーゾフ』のリベンジも終わったことだし今度は『罪と罰』、上下各100円で手に入ったので再挑戦です(笑。新潮文庫、工藤精一郎訳です。

 ドストエフスキーの小説というのは、入れ替わり立ち代り役者が登場し勝手に動き回り、声高に科白を喋りまくり、まるで舞台劇を見ているようです。その科白たるや、やたら「!」が付いた時代がかったもので、登場人物が皆「大見得」を切ります。ストーリーもその通りで、主人公を含め破天荒な人物が登場してはとんでもないことやらかして消えてゆきます。
 貧乏大学生が金貸しの老婆を斧で惨殺して金を盗み、学生の美貌の妹には下心のある中年の魔手が伸び、飲み屋で出会った失業者は娼婦の娘から金を巻き上げて呑んだくれ、学生はこの娼婦と恋仲になり、予審判事が学生の殺人を追い詰める。19世紀のペテルブルグの下町を舞台に、恋あり殺人あり、貧乏学生ラスコーリニコフを中心に多彩な人物がくり広げる人生模様は、文学と云うより風俗小説として読んでも実に面白いです。