【『ハシシタ・奴の本性』】  
 孫正義にはあまり興味がありませんが、ノンフィクション作家・佐野眞一に興味があったので読んでみました。佐野眞一はご存知のように、週刊朝日に連載した『ハシシタ・奴の本性』で橋下大阪市長の返り討ちに会い沈没しました。この事件を契機に「パクリ疑惑」なるものも再浮上し、相当叩かれました。

 『ハシシタ』も読んでみましたが(ありがたいことにnet検索すると全文読めます)、週刊誌という性格上やや過激ですが、それでもどうと云うことはありません。橋下徹という人間を解明するために、両親や橋下家のルーツを詳しく調べると宣言し、そのさわりとして、橋下の出生地と父親、叔父のアウトラインを書いただけです。気になるのは、橋下徹のルーツを調べて、その「本生」を解明することができるかということです。出自がどうの環境がどうの、だから『ハシシタ・奴の本性』はこうだという話を聞かされても仕方がありません。佐野眞一が解明すべきは、橋下人気を支える時代の閉塞感でありそれを煽るジャーナリズムの病理でしょう。「週刊朝日」を「朝日新聞」にすり替え、時流をたのんで喧嘩を売った橋下徹の「取りあえずは」勝ちです。この未完のノンフィクションがどのように展開したかは、これも時の人である孫正義を取り上げた本書を読めば分かるかもしれません。