映画『黙秘』の原作です。家政婦ドロレス・クレイボーンと、その雇い主の富豪の未亡人ヴェラ・ドノヴァンのふたりの“性悪女”の物語として、映画以上に奥行きを持ったサスペンスです。さすが稀代のストーリー・テラーのスティーヴン・キング、30度を越える猛暑の中一気に読んでしまいました。

 粗筋を知っているのでサスペンスとしての面白さは半減しますが、例えば、

 あたしのいうことはなんでも、法廷で不利な証拠として使われるかもかもしれない、だって?開いた口が塞がらないってのはこのことだね。それから、フランク・プルー、あんたのその薄ら笑いなんとかしてくれよ。いまじゃいっちょまえのおまわりさんかもしらんけど、ついこないだまで、そのヌケ作みいたいな薄ら笑いをうかべ、オムツがずり落ちそうな恰好で駆けまわってたじゃないか...。

映画でドロレスを演じたキャシー・ベイツの顔と素振りが目に浮かびます。映画は、どちらかと言うとドロレスの娘セリーナが狂言回しとなって母ドロレスを語る構造になっていましたが、小説は最初から最後までドロレスの一人称による告白から成り立っています。