子母澤寛の「新選組三部作」は、『新選組始末記(1928)』、『新選組遺聞(1929)』『新選組物語(1955)』です。今回読んだのは三巻目『新選組物語』で、冒頭いきなり「隊士絶命記」で沖田総司の最期が描かれ、全巻これ新選組の「落日」を扱っています。慶応3年の油小路事件、近藤勇狙撃事件、4年の「鳥羽伏見の戦い」あたりから、「甲州勝沼の戦い」を経て板橋で勇が処刑されるまでのエピソードが、周辺の人物の聞き語りというスタイルで展開されます。「池田屋事件」などの新選組最盛期の話は、『新選組遺聞』にあるのでしょう。
 鳥羽伏見で戦死したといわれる、浅田次郎『壬生義士伝』で有名になった吉村貫一郎のエピソードも登場します。

 本書は、子母澤寛が小説家として一家をなした頃のもうで、『新選組始末記』に比べると創作、小説の性格が強く出ていますが、生存者の聞き書きという部分はしっかり書き込まれています。