『夫婦善哉』が面白かったので、引き続き「オダサク」です。青空文庫で手軽(0円)に読めるのがありがたいです。

 大阪の話だと思っていたところ、冒頭はマニラから始まるので面食らいます。明治38年に完成したマニラとバギオを結ぶ「ベンゲット道路」建設の話です。この道路は米国が作った道路ですが、難工事のため粘り強い日本移民を使って5年の歳月をかけ、日本人だけでも600人以上の犠牲者を出して完成したそうです。道路建設にたずさわった日本人、通称「ベンゲット他(た)あやん」佐渡岛他吉の明治、大正、昭和の物語です。
 何故マニラから始まるのかと疑問に思ったのですが、オダサクはなるほどという結末を用意しています。

 背中に青龍の「倶利伽羅もんもん」を入れて自ら「ベンゲット他あやん」と名乗る他吉は、ベンゲット道路建設に携わったことに誇りを持っている男です。そんな「浪速男」の物語です。