昭和15年から5年間、20歳から25歳の青春を徴兵忌避者として全国を逃げまわった、浜田庄吉の戦中戦後の物語です。
 似たような小説に、戦争犯罪の追求から逃れる男を描いた、帚木蓬生の『逃亡』があります。『逃亡』が主人公の逃亡そのものを描いているの比べ、『笹まくら』は徴兵忌避と逃亡が戦後の主人公にどのような影を投げかけるのか、徴兵忌避者が生きる戦前と戦後という時代はどう違うのか、ということが主題となっています。

 戦後20年が経ったとありますから、1960年代の話です。私立大学の職員として妻と平凡な生活を送る浜田の元に一通の葉書が届きます。かつて逃亡を共にした阿貴子の訃報でした。この訃報に促され、浜田は太平洋戦争中の5年間の徴兵忌避者の生活と現在を、振り子のように行ったり来たりすることとなります.