オードリー・ヘプバーンと ハンフリー・ボガートのラブコメディーです。公開当時、ヘプバーン25歳、ボガード55歳。親子ほどの年の差をものともせずラブストーリーを作ったことになります。ボガードは『カサブランカ(1942)』で有名になり『アフリカの女王(1951)』ではアカデミー賞を貰うという遅咲きのスターです。この50年代の大スター/ボギーとヘプバーンを組み合わせるというマーケティンがほの見えます。

 歳の差のある恋愛というのは、この後も続き、『昼下りの情事』でゲーリー・クーパーと組み、『マイ・フェア・レディ』の相手役はレックス・ハリスンです。思うに、キュートな若い娘が年配の男性と恋をするという設定は、当時のオジサンの心をくすぐったのでしょう。もうひとつ、ヘプバーンには年上の恋人とともに渋い父親が配されます。『サブリナ』ではお抱え運転手(ジョン・ウィリアムズ)、『昼下りの情事』では私立探偵(モーリス・シュヴァリエ)、『尼僧物語』では外科医(ディーン・ジャガー)、『マイ・フェア・レディ』では飲んだくれのアルフレッド(スタンリー・ホロウェイ)。この父親役には、当時の一流の俳優が起用されています。さらに、母親は不在。どの映画も天使のようなヘプバーンを護るのは、中年の恋人であり初老の父親です。『マイ・フェア・レディ』のアルフレッドの存在がずっと謎でしたが、答えはこの辺りにありそうです。