映画『裏切りのサーカス』を見て、実はよく分からなかったのですが、そこに展開されるスパイたちに人間味に惹かれたので、原作を読んでみました。私が読んだのは、菊池光訳の2006年発行版です。一言で言えば、重厚にして迷路、且つ隘路(笑。「意識の流れ」(ジェイムズ・ジョイス)の英国の伝統か、主人公の意識がやたらと過去へ飛び、ストーリーの「今」を忘れてしまいそうになります。

 映画は、原作の雰囲気はよく伝えているのですが、シーンシーンの奥にある物語まで読むことは出来ません。例えば、ジム・プリドーとビル・ヘイドンの関係です。映画のラスト近くで、ふたりがパーティーで意味ありげに微笑を交わしたシーンの後、プリドーはヘイドンをライフルで撃ち殺します。この「微笑」が実はふたりがオックスフォード以来の「恋人」同士であることを言いたいのですが、これは分かりません。では何故殺したのか?、これも原作を読んでやっと理解出来ました。