保阪正康は、『瀬島龍三―参謀の昭和史』『昭和史七つの謎』に続き三冊目。「昭和史を語り継ぐ会」を主宰する、昭和史のノンフィクション作家の処女作です。

【日蓮会】

 1937年、国会議事堂など5ヶ所で割腹自殺を図る事件が発生し、その5名が「日蓮会(殉教衆青年党)」の信者であり、「死のう、死のう」と唱えながら割腹を図ったため、「死のう団事件」と呼ばれます。

 「日蓮会」は、1927年、江川忠治(桜堂)が弱冠22歳で創立した、日蓮を教義の中枢に据えた教団です。江川は、荏原郡蒲田町(大田区)の生まれで、日蓮宗本山・池上本門寺にも近く、父親が熱心な信者であったように幼少から宗教的環境で育ったのでしょう。江川は、10代の頃から熱心な「法華経」と日蓮の信奉者であり、既成教団の活動に飽きたらず日蓮の教えを広め昭和の日蓮たらんとします。