原作は笹本稜平の連作短編集。名カメラマン(と言われる)木村大作による『劔岳 点の記』に続く監督第二作。

 小説は、サラリーマンを辞めて父親の跡を継いだ山小屋の主人・亨と、小屋を手伝うゴロさんが出会う、山にまつわる事件を描いたミステリです。
 面白いのはのこのゴロさんです。亨の父親の古い山岳仲間で、山小屋経営の経験のない亨の押しかけ助っ人。一年の半分は小屋で働き、残りの半分は下界でホームレス暮らし、という設定です。飄々とした人柄と気の聞いた警句で、小説に奥行きを与えています。
 ゴロさんは、『未踏峰』に登場するアスペルガー症候群のサヤカとともに、笹本稜平が作った二大キャラクターです。

 映画は、原作にあるミステリ臭を綺麗さっぱり取り去って、このゴロさんに豊川悦司を起用し、ゴロさんを如何に描くかに力点が置かれます。
亨の父親は登山者を救うために遭難死しています。亨とゴロさんが出会うシーンで、ゴロさんはおもむろに煙草を吸い始め、

人間と煙草の共通点は何か?、煙になってはじめてその値打ちが分かる

これには笑いました、確か原作には無かったような...。
 映画の成功は、このゴロさんにかかっています。強面の豊川悦司が、ヘンにはしゃぎますから違和感が無くもないですが、そういう意味では失敗ではないでしょう。

 亨の松山ケンイチ、愛の蒼井優は可もなく不可もなし。名カメラマン、木村大作の山岳映像はグラビアの如しで、これも可もなく不可もなし(原作を読んでいると不可が増えそうですが、原作と映画は別物?)。
 と言う映画です(紹介にも解説にもなっていませんね)。

 
 ゴロさん

監督、撮影:木村大作
出演:松山ケンイチ 蒼井優 豊川悦司