兵士を追え (小学館文庫 す 7-3)

  • 作者: 杉山 隆男
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/11/06
  • メディア: 文庫


 『兵士に聞け』『兵士を見よ』に続く3部作です。兵士とは自衛官です。それぞれ主に陸上自衛隊、航空自衛隊の体験ルポルタージュで、自衛隊を『兵士』の目線で追い、この憲法の鬼子を正当な兵士と位置づけた作品です(政治的な意図は全く感じません)。『兵士を追え』では、殆ど知られることのなかった海上自衛隊の潜水艦がルポされます。著者は新聞社のIT化を書いた『メディアの興亡』で1986年に大宅ノンフィクション賞を受賞しています。これも賞の名に値する重厚で精緻なルポです。読売新聞の記者であった著者の書くこれらのノンフィクションは、個人的には『ルポルタージュ』だと思います。著者の視点で対象を分析しその姿を描くというより、対象を見、対象に聞き、著者が何を感じたかを生のまま書くというスタイルを取っています。ジャンルの定義付けはともかくとして、著者のこのスタイルは新聞の『調査報道』になるのでしょうか。文章も平易で読み易くジャーナリストの文章かなと思います。