憑神 (新潮文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 文庫
 この人の小説はまず裏切られ事は無い、と云うほどの巧者です。本書『憑神』は舞台や映画にもなっています。
 物語は、維新もすぐそこと云う江戸末期、七十俵五十人扶持の御徒士組次男坊・別所彦四郎が主人公です。

 別所家は、徳川に使えて250年続いた由緒正しき御徒士の家柄。役目は将軍の『影武者』で、先祖は関ヶ原の戦いでは影武者として真田幸村と戦った云います(この影武者がストーリーの伏線ともなっています)。彦四郎は、昌平黌(しょへいこう)に学び、剣は直心影流男谷道場の免許皆伝という文武両道に秀でた青年です。がこの彦四郎、次男(部屋住)ですから別所家の跡継ぎとはなれず、養子に出ていたのですが、仕事の失敗から養家を追い出され出戻っているという惨めな境遇にあります。彦四郎が川端の祠に就職の願をかけたことから物語が始まります。