「13デイズ」つながりで見ました。3時間を超える大作ですが、作り物でない事実の重みに引きづられて最後まで一気に見ました。「JFK」がケネディ暗殺を扱ったものであることは知っていましたが、ニューオリンズの一地方検事が暗殺を暴く訴訟を起こしたことは、で知りませんでした。この映画の主人公でもあるジム・ギャリソンの著書「JFK―ケネディ暗殺犯を追え」を映画化したものです。
ケネディはテキサスのダラスで殺されたのに、何故ニューオリンズの地方検事なのだ、と思いますね。ケネディ暗殺犯とされるオズワルドは、ジム・ギャリソンの管轄であるニューオリンズで、カストロを支援するビラを撒いてもめるという事件を起こしているわけです(deep southでやりますか?)。ジム・ギャリソンは職務上オズワルドのニューオリンズでの行動を調べると、彼に接触があったフェリーが浮かび、フェリーは暗殺当日テキサスに行ったことが判明します。これは怪しい、というところから始まります。
この暗殺事件には、怪しい人物が沢山出てきます。
オズワルド(ゲイリー・オールドマン):在日米軍時代にロシア語を学び、1959年ソ連に亡命。1962年に妻とともに帰国してダラスに住むのですが、ソ連に亡命したオズワルドの入国をあっさり受け入れ、就職した先が政府の息のかかった会社。ニューオリンズに移ってカストロ支援団体に属したり、ピッグス湾事件に関わったフェリーや元FBIシカゴ支局長の私立探偵バニスターとコソコソ会ったり、CIAの協力者あったようです。U2がソ連上空で撃墜されたのも、オズワルドが亡命の土産に持っていった情報に基づいていると言われています
フェリー(ジョー・ペシ):カツラを被りマユを描いた異様な相貌で神父志望の元パイロットでホモ。ピッグス湾事件にも関わった反共主義者。事件の日テキサスにいた様で、オズワルド、彼を殺すこととなるジャック・ルビー、ギャリソンが訴追するクレイ・ショーとも繋がっているという怪しさ。おまけに1967年、ギャリソンの調査が始まると謎の自殺を遂げてしまいます。
クレイ・ショー(トミー・リー・ジョーンズ):ニューオリンズの名士で実業家。フェリーと一緒に一連のキューバ侵攻事件に関わる。後に裏のCIA局員であることが発覚。ケネディ暗殺事件の共同謀議でギャリソンに訴追されるが、無罪(1969クレイ・ショー裁判)。
三大怪人です(笑。この三人の他にも、元FBIシカゴ支局長で現在は探偵業のバニスター、フェリーやショーのホモ友達のオキーフ、ギャリソンに暗殺の舞台裏を推理してみせるX大佐、などなど。
ショー・ペシのフェリー ゲイリー・オールドマンのオズワルド
ニューオリンズから見ると、暗殺事件の背後にこういう怪しい連中が見え隠れし、ギャリソンは生き残った(フェリーとオズワルドは死んでいます)クレイ・ショーを法廷に引きずり出します。事件を調査したウォーレン委員会は、オズワルドの単独犯という結論を出しています。ギャリソンはザプルーダー・フィルムを手がかりに、暗殺者は複数であり事件の背後にはCIAや軍部による国家的陰謀(クーデター)とし、クレイ・ショーを共同謀議で起訴しようとします。
結果は無罪。怪しさイッパイですが、直接的な証拠の無いこの訴追は無理があるのでは無かろうかと思います。
冒頭で、既にこの暗殺事件の種明かしがされています。
軍産複合体の経済的そして精神的とまでいえる影響力は、すべての市すべての州政府、すべての連邦政府機関に浸透している。・・・軍産複合体、不当な影響力を獲得し、それを行使することに対して政府も議会も特に用心しなければならない。この不当な力が発生する危険性は、現在、存在するし、今後も存在し続けるだろう。この複合体が、われわれの自由と民主的政治過程を破壊するようなことを許してはならない。
というアイゼンハワーの演説です。ベトナム戦争の縮小撤退を考えるケネディを、軍産複合体が排除したというのが、これがケネディ暗殺事件の実体だと云うわけです。いろいろな証拠物件が2039年まで封印されています。後27年ありますが、がんばって生き延びましょう(笑。
この映画で光っているのがフェリーを演じるジョー・ペシ。カツラを被って眉毛を描いた158センチのホモという見た目もメチャクチャ怪しい役です。この人はホームアローンのあの小さい方のドロボーですが、先日見た「グッドシェパード」にも怪しいマフィアで出ていました。ニュース映画や回想シーンのオズワルドをゲイリー・オールドマンが演じてます。この人も怪しい役をやらせれば天下一品。JFKの後コッポラの「ドラキュラ」「レオン」となって、最近「ザ・ウォーカー」でもお目にかかりました。いずれも怪しい役をやってます。クレイ・ショーにトミー・リー・ジョーンズと、敵役に個性派が勢揃いしています。検事局側はウェイン・ナイトくらい。この人は「ジュラシックパーク」のあのデブのエンジニアで恐竜に喰われます。オズワルド単独犯で暗殺事件の幕を引いたウォーレン最高裁長官をジム・ギャリソンが演じているという皮肉もあります。監督は「プラトーン」のオリバー・ストーン。 ところで、ジョー・ペシとオールドマンがコンビの映画(ステート・オブ・グレース)があるんですねぇ、今度見てみます。 ジョー・ペシではなくショーン・ベンでした、残念。
で、お薦めかと云うと、CIA、キューバ危機やケネディー暗殺に興味があれば、絶対のオススメです。情報量が多いので、予習して見るといいでしょう(笑。伝説となった事件の黒幕はCIAだ、ジョンソン(元大統領)だと(たとえ映画であっても)言ったのですから、これは騒ぎになりますねぇ。
監督:オリバー・ストーン
出演:ケビン・コスナー トミー・リー・ジョーンズ ゲイリー・オールドマン ケヴィン・ベーコン ジョー・ペシ