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映画 13デイズ(2000米) [日記(2012)]

13デイズ<DTS EDITION> [DVD]
 1962年のキューバ危機を扱ったセミ・ドキュメンタリーです。従って、J・Fケネディ、ロバート・ケネディ、ロバート・マクナラマなど現代史を飾る有名どころが登場し、舞台はほとんどホワイトハウスです。

 ソヴィエトが崩壊し東西の冷戦構造が変化した今日、「キューバ危機」って何だと言われそうですが(もちろん私も記憶にありません)、1962年に世界は第三次世界大戦の入り口に立ったことがあります。この危機が如何に回避されたかを描いた、政治ドラマです。「ピッグス湾事件」を背景にした「グッドシェパード」がありますが、あれは、冷戦が生み出したスパイ・マスターの人間ドラマです。「13デイズ」にも人間のドラマはあるわけですが、主役は、あくまで米ソの覇権争いであり、核による世界滅亡の一歩手前で引き返した人間の知恵です。それはたぶん、ケネディ、フルシチョフ個人の資質ではなく、ふたりに代表される人間の理性です。

 フロリダの150km先にある社会主義国家キューバは、アメリカの喉元に突きつけられた刃だと表現されますが、当時にあってキューバは目障りで脅威だったわけです。CIAの起こした「ピッグス湾事件(1961年)」などで、この脅威を取り除こうとして失敗した経緯があります。このキューバにソ連の核ミサイルが配備されたことが発覚したのですから、これはもう喉元の刃が現実となったわけです。1962年10月14日にミサイルが発見されてから、フルシチョフがミサイル撤去宣言を出す28日までの13日間を描きますが、書き抜くとこうなります、

10/14:U-2偵察機が、ミサイルと支援のソ連軍を発見
10/18:駐米ソ連大使をホワイトハウスに呼びつける
10/22:ケネディ、テレビ演説で事実を公表、ソ連を非難
10/25:国連で米国連大使がミサイル基地の写真を公表
10/26:ソ連からアメリカへ妥協案が示される
10/27:トルコ配備のミサイル撤退を要求に妥協案の修正、U-2偵察機撃墜
10/28:フルシチョフがモスクワ放送でミサイル撤去を発表

 ホワイトハウスを舞台に、この13日間の緊迫したドラマが描かれますが、この辺りは結果を知っていても手に汗を握ります。ドラマとなるのは、米ソの闘いではなく、ホワイトハウス内の、ハト派とタカ派の闘いです。この危機を交渉によって解決しようというケネディ兄弟、マクナマラのハト派と、武力によってソ連を封じ込めようとする国防総省、軍部のタカ派の闘いです。結果はソ連のミサイル撤去でケネディの勝利となり、ハト派賛辞のようにも見えますが、戦争を嫌う米ソ両国の良識の勝利だったのではないかと思われます。

 アメリカはキューバ周辺海上の封鎖とソ連船の臨検を行い、Uターンしないソ連船に発砲するシーンがあります。発射されたのは曳光弾だったのですが、この発砲を実弾と勘違いしたマクナラマの怒声が面白いです。

何も分かっていない!これは“封鎖”ではない
これは“言語”だ!世界が初めて知る言語だ
大統領がフルシチョフとこれで対話しているのだ!

なるほど、マクナマラ、カッコイイ!。

 一連のドラマが、大統領特別補佐官のケネス・オドネル(ケビン・コスナー)の眼を通じて描かれます。大統領をジャック、司法長官をボブと呼ぶ「アイリッシュマフィア」のひとりです。こちらを見れば、この大統領府の若さに驚かざるをえません。ケネディ45歳、マクナマラ46歳、ケネス・オドネル38歳、ロバート・ケネディに至っては36歳です。ある意味、若さがこの危機を乗り切ったとも言えるのではないかと。ちなみに、フルシチョフ68歳、カストロ37歳です。

 ちょっと意外だったのは、国防長官のマクナマラ。ベトナム戦争を拡大した張本人でタカ派だと思っていたのですが、キューバ危機ではハト派です。

 「13デイズ」は、その辺のサスペンス映画が色あせて見えるほどスリルとサスペンスに満ちています、お薦めです。

監督:ロジャー・ドナルドソン
出演者:ケビン・コスナー ブルース・グリーンウッド スティーブン・カルプ

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ktm

この映画、記憶に残るシーンがあります。
最後に撃墜されて亡くなった U2 のパイロットの遺族宛てに大統領が手紙を書きます。 これは他の映画にも出てくる事ですが、日本では味も素っ気もないただの戦死公報だけです。 何なんだろこの違いはと思いました。

確かに、この危機を救ったのは両者の知性だと思います。 特に、ケネディ兄弟の。 親ブッシュでなく、子ブッシュだったらとっと海兵隊を送っていたと思います。 やはり JFK は、歴史書も書くほど歴史に精通した大統領だったからあの危機を切り抜けたのだと思います。


by ktm (2012-01-14 01:31) 

べっちゃん

「プライベートライアン」にも、大統領が戦死者の母親宛に慰めの手紙を書くシーンがあります。「八月の砲声」の教訓は何だったんだ、とケネディが嘆く(怒る)シーンがあり、読んでみようかと思っています。
by べっちゃん (2012-01-14 08:51) 

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